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中日・根尾昂22歳の投手転向は“ネガティブな挑戦”? 評論家からは疑問の声「あまりに安易」「今後のドラフト戦略にも影響するのでは」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/06/15 12:15
プロ入り4年目の根尾昂。「投手登録」の決断に、野球評論家から懸念の声も寄せられた
評論家からはネガティブな声多数
それなら「どっちつかずになる」と言われた二刀流ではなく、投手への本格挑戦は根尾の野球人生の転機となるのか。筆者は何人もの野球評論家に意見を求めたが、投手登録を支持したのは1人もいなかった。論旨は以下のようなものであった。
「投手から野手に転向するより、野手から投手に挑戦する方がはるかに難易度が高い」
「高校野球を最後に3年以上、根尾は投げていなかった。(一・二軍)3試合だけで絶対に無理だとは言わないが、ブランクを割り引いても驚くほどのパフォーマンスではなかった」
「コンバートは選手にとって重大事。そもそも現場の責任者ではなく、フロントが発信すべき案件ではないのか」
「4球団競合のドラフト1位。野手で育てられなかったから投手をやらせるでは、あまりに安易。アマチュア球界からの信用はがた落ちし、今後のドラフト戦略にも影響するのではないか」
反対意見を覆せるか?
二刀流以上に逆風が強いのは、投手の能力に懐疑的なのと、ポジティブな挑戦ではなくネガティブなイメージがあるからだろう。先にサラリーマンの社内異動に例えたが、今回のケースと大きく違うのは「NO」が言えること。今回の根尾のように選手としての根幹にかかわる変更は本人の同意なくして成立しない。会社員とは違い、プロ野球選手は個人事業主。組織に従うべき部分(作戦や二軍降格、何番を打つかなど)はもちろんあるが、「野手ではなく投手をやれ」は業務命令ではない。アスリートファーストが大原則であり、実際、公表前に立浪監督と根尾は複数回の面談を重ねたようだ。根尾本人の思いはメディアを通して知るのみだが、少なくとも強制ではない。
大きく負け越しているチーム状況にあって、野手の根尾が不在となることは痛手ではないし、投手の根尾が加わることも戦力アップではない。しかし、根尾自身にとっては「どっちつかず」の二刀流ではなく、事実上、退路を断ち切って投手に挑むのはプロ野球人生の正念場である。二軍で一から学ぶのではなく、そのまま一軍に残って登板キャリアを積むようだ。もちろん、すぐに結果を伴うとは考えづらいが、1年後には反対意見を覆させるだけの答えを求められる。
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