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中日・根尾昂22歳の投手転向は“ネガティブな挑戦”? 評論家からは疑問の声「あまりに安易」「今後のドラフト戦略にも影響するのでは」
posted2022/06/15 12:15
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
BUNGEISHUNJU
今シーズンのドラゴンズの交流戦は7勝11敗。うち完封負けが6試合と、当初から懸念された得点力不足は依然として深刻である。
球団は交流戦が始まるタイミングで中村紀洋(一軍から二軍)、波留敏夫(二軍から一軍)の両打撃コーチを配置転換。てこ入れをはかったが、目に見えた効果は出ていない。痛かったのは未来の4番として育成中だった石川昂弥が左膝前十字靱帯を痛め、長期離脱したことだ。
まさしく満身創痍で交流戦を終えた6月13日、立浪和義監督は番記者との囲み取材に応じ、根尾昂を「投手登録」することを明らかにした。前回も少し触れたが、選手にはそれぞれの登録ポジションがある。縛られることはないし、いつでも変更可能。根尾の場合は今年3月に内野手から外野手に変更したが、それ以前も外野手で出ていたし、以後に内野手で出場したこともある。何よりも外野手登録のまま、一軍戦に2試合登板している。
「球の速い野手」から「打撃のいい投手」へ
ただし、今回の変更はそれよりもはるかに重い。サラリーマンでいえば従来は「野手部外野手課」に籍を置き「投手部」の業務も担っていたのが、正式に「投手部リリーフ課」に社内異動となった。当然、直属の上司も替わる。打撃なら波留コーチ、外野守備なら大西崇之コーチだったのが、落合英二(ヘッド兼務)、大塚晶文両投手コーチの指導の下、投手陣の1人として練習し、試合に臨む。コンバートというよりは当面は二刀流のようだが、今回の異動により投手と野手の主と従は逆転。「球の速い野手」ではなく「打撃のいい投手」になるということだ。
外野手もしくは遊撃手として先発出場し、終盤のマウンドにセットアッパーとして上がる。前回の記事で筆者はこの二刀流が最終理想形ではと予測したが、今回の登録変更は二刀流ではなくほぼ転向。立浪監督が明かした理想形も、将来は先発でというものだった。もっとも二刀流についてはネットを中心に反対意見の方が多かった。「どっちつかずになる」という考えだ。しかし、二刀流とは「どっちつかず」なものである。大谷翔平ですら、同一シーズンで投打いずれもスペックに見合う成績を残すことは非常に難しい。それでもあえて二本の刀を持って戦うから二刀流は称賛される。では、根尾が3年あまり専念してきた野手としての成績はどうなのか。
野手・根尾の3年間を改めて振り返る
一軍では109試合に出場し、打率.172、1本塁打で盗塁はない。40安打をはるかに上回る70三振を喫しており、一軍クラスの球には太刀打ちできていない現状を示している。二軍では230試合で打率・215、9本塁打。一軍で飛躍する若手野手が、必ずしも二軍で好成績を収めているわけではないが、やはり三振数(256)が安打数(186)を上回っている。根尾が長打に特化した打者ではなく、確実性の延長線上に本塁打を打つタイプだけに、気になる数字ではある。