プロ野球亭日乗BACK NUMBER
先輩選手「あの“気づき”で捕手が務まるのか?」巨人・小林誠司(33歳)がカラを破れない理由《ナゾの2塁送球、打率は2年連続1割未満》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/06/12 11:03
球界でも屈指の強肩を誇る小林誠司だが、捕手として“突き抜けられない”のはなぜか?
大城卓三捕手が不振でファーム落ち。小林にとっては正捕手奪回への絶好のチャンスだったはずだが、これで大城が一軍再登録の際には、その交代メンバーにもなりかねないピンチに立たされることになってしまった。
グラウンドで何を考えているのか分からないときがある
小林は決して悪い捕手ではないと思う。というより傑出した肩の強さ、フットワークの軽やかさを考えれば、日本を代表する捕手となれるくらいの資質を備えた選手であるとも思う。
ただ一つ……グラウンドで何を考えているのか分からないときがあり、それが攻守で顔を出す。そこが小林のなかなか抜けきれない理由ではないかと感じるところだ。
捕手とは「気づき」を求められるポジション
プロ入り直後にある選手からこんな話を聞いた。
先輩に食事に連れて行ってもらった時に、その先輩のグラスが空になっても、小林は全く気づかなかったというのだ。先輩の酒を作れと強制するのはモラハラという話は置いておく。その選手から聞いたのは「あの気づきで捕手が務まるのだろうか?」という疑問だった。
捕手とはそういう「気づき」を求められるポジションなのだ。
もちろんその後に小林も捕手として勉強し、次第に成長もした。特に“スガコバ”として長くコンビを組む菅野に鍛えられて、捕手力は大きく伸びている。以前には捕球するとすぐに「ストライクだろ」と腰を浮かせることに審判から目をつけられて、厳しい判定をされることもあった。そんな姿も徐々に影を潜めて、今はフレーミングではチームナンバーワンと評価され捕球技術への評価も高い。
ただ、それでもときとして、かつての「気づき」のなさがいまも顔を出してしまう。
それを感じるのが、最大の課題と言われるバッティングを見るときだ。
小林とついつい比較して見てしまうのがソフトバンクの甲斐拓也捕手だった。甲斐も強肩とフットワークの良さで守れる捕手としての評価は高いが、打てないと言われる選手ではある。