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「朗希の後に投げる。それが理想だよね」ロッテスカウトが描いた“夢プラン”が実現中…打者が困惑する佐藤奨真の130キロ台直球と研究したカーブ
posted2022/06/11 17:00
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千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
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Chiba Lotte Marines
生まれは東京・墨田区。実家からは東京スカイツリーが見える。小学校の頃は通学路からその建設過程を眺めていたという。
そんな下町で育った千葉ロッテマリーンズの左腕・佐藤奨真にとって、東京ドームは憧れの舞台でもある。小学校の頃は年に数回、所属する野球チームの仲間たちとスタンドから声援を送っていた。
6月4日のジャイアンツ戦、佐藤は初めて東京ドームのマウンドに上がった。今年3月に育成契約から支配下登録されたばかり。まだプロで白星を上げていない24歳は、4万444人の大観衆が見守るマウンドで堂々たるピッチングを披露。前日に登板した“令和の怪物”佐々木朗希投手の余韻が残るマウンドで、7回を投げて被安打4、2失点の好投を見せた。
佐々木朗希のような剛速球はない。佐藤のストレートは130キロ後半。それでもカーブ、チェンジアップとのコンビネーションで強力ジャイアンツ打線を翻弄。勝ち星はつかなかったが、ファンの記憶に残る投球を見せた。
「東京ドームはやっぱり憧れの舞台ではありました。勝ちたかったですね」
「朗希の後に投げる。そういう形が理想だよね」
ジャイアンツ戦は先発3試合目だった。プロ初先発は5月14日、京セラドーム大阪でのオリックス・バファローズ戦。山本由伸との投げ合い、6回を被安打2、1失点の好投。2度目は5月28日、ZOZOマリンスタジアムでの阪神タイガース戦。これまた相手はエースの青柳晃洋だったが、3回までに4点を失いながらも残り3イニングを無失点で切り抜けた。いずれも負け投手となっているが、粘りのピッチングを見せている。
投球と共に注目を集めているのが“登板日”だ。佐藤が先発したのはすべて佐々木朗希が投げた翌試合。160キロ超のストレートを投じる剛腕と、130キロ台のストレートを投じる技巧派左腕のローテーションの妙は話題を集めている。
相手打者には前日の“剛速球”の残像が残っているのだろうか。佐藤本人も「カーブを投げると打者が突っ込み気味になっている印象はある」と話す。
佐藤が思い出すのは、入団時に福澤洋一担当スカウトに言われた言葉だった。
「朗希の後に投げる。そういう形が理想だよね」
20年秋のドラフトで育成4位指名を受け、専修大学からマリーンズに入団。当時はその前年にドラフト1位で入団した佐々木朗希を引き合いに出されてもピンとこなかったが、担当スカウトがプロ入りの門出に話してくれた“夢プラン”はいまや現実のものとなっている。