プロ野球亭日乗BACK NUMBER
先輩選手「あの“気づき”で捕手が務まるのか?」巨人・小林誠司(33歳)がカラを破れない理由《ナゾの2塁送球、打率は2年連続1割未満》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/06/12 11:03
球界でも屈指の強肩を誇る小林誠司だが、捕手として“突き抜けられない”のはなぜか?
「いったい自分はどういう打者だと思っているのだろうか……」
一方の小林の打撃練習は、気持ちよさそうにフルスイングして、打球はときどきレフトスタンドに飛び込んでいく。フルスインガーの長距離打者のような練習風景である。
「いったい自分はどういう打者だと思っているのだろうか……」
練習を見ているとついそんなことを考えてしまうのだ。
実戦でもこんな場面があった。
6月5日のロッテ戦だった。
1点を追う4回1死二塁。二塁走者を牽制してロッテ・中村奨吾二塁手は二塁ベース寄りの守備位置をとり一、二塁間は大きく空いていた。それでも小林は、カウント2ボール1ストライクから外寄りのカットボールを引っ張って三ゴロに倒れた。
次打者は投手の打順だったが、代打に中田翔内野手が控えていた。右方向の意識さえあれば走者を三塁に進め、相手バッテリーには、わずかでも中田に対する配球面での制約も作ることができたはずである。
グラウンドの風景が見えていないのか、自分で決める意識が強すぎるのか……そこが小林を見ていて「気づき」の無さを感じるところなのである。
20年は5分6厘、21年は9分3厘と1割にも満たない低打率
小林は19年に2割4分4厘の打率を残したが、20年は5分6厘、21年は9分3厘と1割にも満たない低打率に喘いでいる。
今季は「守備面では1番手」(原監督)と開幕を“スガコバ”コンビでスタートしたものの、次第に出番も減ってきていた。その矢先の大城の二軍再調整だったが、打席では9日の西武戦まで16打数連続無安打が続き、肝心の守備面でも手痛いミスを犯してしまった訳である。
あれだけ捕手としての高いポテンシャルを秘めながら、あと一つ「気づき」があれば突き破れそうな殻を抜け出せないままに9年の月日が経とうとしている。だから小林にはいつも歯痒さばかりが残ってしまう。
そう甘くはないと思う。それでも「力が同じならば若い選手を使う」という原監督の、チームの方針からすれば山瀬慎之助の活躍は巨人捕手陣の大きなトピックだ。
それはまた小林の巨人での立場を、一つの大きな岐路へと追い込むことになるのかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。