酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
日本の審判に「戦力外通告」がある一方で… アメリカで物議を醸す「AIの厳格すぎストライク判定」とは〈佐々木朗希の件以外に今季退場3回〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/06/03 11:04
2022年の野球界は審判が注目されることが増えている
アストロズのブライアン・マッキャンは卓越したフレーミング技術でチームの勝利に大いに貢献したと言われるが、フレーミングとは「ボールゾーンの投球をミットを動かしてストライクゾーンにすること」ではなく(これはボールと判定される)、捕球の姿勢やキャッチングで有利な判定を導き出す技術とされる。
人間の審判はこうした複雑な状況を瞬時に判断し、ジャッジをしていた。
AIがこうした様々な状況に対する人間の審判のジャッジのデータを学習するとすれば、それは、これまで通りの判断基準が継承されることに他ならない。人間の審判にはつきものの「判断の揺れ」や「ぶれ」は多少是正されるだろうが、それでも打者、投手、そしてファンが完全に納得するような判定はAI以前と同様、できないだろう。
AIであれ、人間であれ最も大事なのは……
結局のところAIであれ、人間の審判であれ「審判のジャッジを信頼するかどうか」という究極の問題に行き着く。
筆者は毎年プロ野球の春季キャンプに行くが、ブルペンでは審判が捕手の後ろに立ってストライクのコールをしている。これは目慣らしをしているだけではなく、個々の投手の球筋を見極め、ストライクボールの判断をしているのだ。時折投手と話をするシーンも見かけるが、そうした情報は審判部で共有され、シーズンのジャッジに役立てられる。
審判も選手と同様、無謬ではない。時には不可解なジャッジをすることもあるだろうが、それでも試合を主宰する審判を信頼することから始めなければならない。
「信頼できる審判、ジャッジ」の第一歩は「我々が審判を信頼すること」なのである。
<#2、#1につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。