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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
〈独占インタビュー〉名将クロップ55歳が明かす憧れとリアリズム「クライフとは一度でいいから…」「“勝ってなんぼの世界”は理解できるが」
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph byGetty Images
posted2022/05/27 17:15
リバプールを率いて7シーズン、自身二度目のCL制覇に挑むクロップが決戦を前に自らの哲学を語ってくれた
クライフとは一度会って話をしてみたかった
クロップ自身は、旧西ドイツで開催された1974年のW杯で、初めてドイツとオランダのサッカーに触れた。
「サッカーに関する最初の記憶が、あの大会。7歳の子供だったから、ひたすら自分の国を応援するだけだったけどね。その後、5、6回は決勝戦の映像を見直しているが、当時のドイツ代表は本当に強かった。チームにはワールドクラスもいた。だがオランダの凄さも驚異的で、呆れるほど素晴らしいチームだった。優勝していても不思議ではなかったが、なぜかドイツが勝てた(苦笑)。
母国開催で会場の雰囲気が味方した面もあっただろう。もちろん、ゲルト・ミュラーの存在も忘れてはいけない。オランダのサッカーは多くの人々の目を奪ったが、トロフィーを手にすることはできなかった。それにしても、(オランダ代表の中心だった)ヨハン・クライフとは一度でいいから会って話をしてみたかった。“トータルフットボール”の体現者で、サッカー界に絶大な影響を与えた偉人だ」
この6月で55歳になるリバプール指揮官は、「しかし」と続けた。
「監督の仕事は夢を見ることではない。仕事の対象は手元にある戦力という現実であって、それを最大限に高めて発揮させることにある。カウンタープレッシングにしても、ただ理想を追っているわけではなく、守勢が続く事態を避けたいと思うなら、高い位置で素早くボールを奪い返すに越したことはないという現実的な理由がある」
当初は「最後の最後で勝てない監督」と見られていた
実際のところ、カウンタープレッシングという戦術はリバプールに合っていた。ただし、クロップ体制発足直後の3シーズンはプレミアで4位が最高で無冠。現実を直視しながら、スタイルの改良と研磨に励まなければならなかった。
「ファインチューニングの連続さ。チームは今でも意欲と情熱を失うことなく、能動的な守備ユニットとしての完成度を高める努力を続けている。おかげでソリッドな集団でありつつ、見応えのあるサッカーができるようになってきた。タイトルという結果に関しては納得している人もいれば、不十分と言う人もいるだろう。だが、我々自身が求めるものの本質は、結果を導き出す方法にある。自分たちのサッカーにある。私にとっては、それが成功のレベルを測る唯一の尺度だ。その意味での最高水準を目指す努力が続いている」
当初は、クロップ自身が「最後の最後で勝てない監督」と見られていた。リバプールの1年目も、ヨーロッパリーグ決勝にチームを導きながらも敗者で終わった。翌シーズンに出場権を勝ち取ったCLでも、3年ぶりの復帰を優勝で飾るかと期待を持たせながら、その2017-18シーズン決勝でレアル・マドリーに敗れている。