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〈独占インタビュー〉名将クロップ55歳が明かす憧れとリアリズム「クライフとは一度でいいから…」「“勝ってなんぼの世界”は理解できるが」
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph byGetty Images
posted2022/05/27 17:15
リバプールを率いて7シーズン、自身二度目のCL制覇に挑むクロップが決戦を前に自らの哲学を語ってくれた
「決勝での連続敗戦にかけては世界記録保持者だからな(苦笑)。確か6回連続。決勝は勝ってなんぼの世界だという言い分は理解できるが、個人的にはタイトルを獲れなければ意味がない、という意識を持ったことは一度もない。つまり、最終的な勝ち負けですべてを判断するようなことはあり得ない。
負けてどれだけ悔しい思いが胸の中にあっても、頭のなかでは『最終スコアは別として悔いのない戦いができていたか?』『納得できる内容だったか?』と考える。その答えが『イエス』なら、前を向いて進むだけだ。それ以外の要素は、一発勝負で起こり得るその場限りの出来事でしかない。なかには勝てた理由が分からないようなチームもあるだろうが、我々は勝った理由が理解できる。同時に、勝てなかった場合の理由も。勝てるようになった背景には、敗戦を糧にした成長があるからだ」
私のなかではペップしかいなかった
2018年のCL決勝で敗れた後のクロップ体制には、1つの重要な変化も起きた。長年の“右脳”だったジェリコ・ブバッチがチームを去ることが決まったため、指揮官は後任を探さなければならなかった。もっとも、意中の候補は決まっていたという。それが、同年1月から祖国のNECナイメヘンで監督に挑戦していたラインダースである。クロップは、以前よりも責任ある立場での帰還を求めて、自らラブコールを送っている。
「私のなかでは、第1、第2、第3候補もペップしかいなかった。一緒に仕事をした経験という最善の判断材料から、彼しかいないと思っていた。電話で戻って来てほしいと伝えて、その気があるかどうかを訊いてみたら『イエーーース!』という反応でね。本当に優秀な指導者だと評価しているし、最終的には監督としても素晴らしい未来が待っているはずだ。ただ現時点では、ここで一緒に仕事をしてくれていることが嬉しくて仕方ない」
クロップのリバプールが初めてタイトルを手に入れた2018-19シーズンのCL決勝、その1週間前に仮想トッテナムとしてベンフィカ2軍とのテストマッチをアレンジしたことで、本番で予行演習と同じパターンで先制点を奪えたのはラインダースのおかげだ。
翌シーズンは、ポルトのBチームで助監督を務めていたビトール・マトス(エリート・ディベロップメント・コーチ)もコーチングスタッフに加わった。
「ペップとビトールは揃ってポルトのアカデミーで教えていた経験がある。多いときには1日に6、7セッション、年齢や顔ぶれが異なるチームに合った練習メニューを組むような環境だ。彼らはまるでエクササイズ作成マシン内蔵で、次から次へと効果的なメニューを打ち出してくれているようなものさ(笑)」
<後編に続く>
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