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〈独占インタビュー〉名将クロップ55歳が明かす憧れとリアリズム「クライフとは一度でいいから…」「“勝ってなんぼの世界”は理解できるが」
posted2022/05/27 17:15
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph by
Getty Images
サッカー界でトップクラスと評される監督のなかでも、「トレードマーク」と言われるスタイルの持ち主は決して多くない。そんな数少ない1人が、ユルゲン・クロップだ。
自身の代名詞と言っていいカウンタープレッシングは、祖国であるドイツのマインツ05とボルシア・ドルトムント、さらには、2015年の秋から采配を振るうリバプールに興奮と成功をもたらしてきた。
7シーズン目となった今季は、プレミアリーグの最終節までマンチェスター・シティと熾烈なタイトル争いを演じ、最終的に1ポイント差で2位に終わったものの、FAカップとリーグカップを制覇。CLでも5月28日にレアル・マドリーとの決勝に挑む。
去る3月31日、クラブのAXAトレーニングセンターにあるミーティングルームで今回のインタビューは実現した。白い歯を輝かせるリバプール指揮官は、チームスタッフや選手の話になると、ことさら情熱的に自らの哲学を語ってくれた。<翻訳:山中忍/全2回の前編。後編も>
リバプールの練習施設には2面のパデル専用コートが
コーチングスタッフと一緒に「ある物」を発見したのは、大西洋に浮かぶスペイン領のテネリフェ島で合宿を行った2、3年前のことだったという。チームが宿泊したホテルは、テニスコートの近くに見慣れないコートが2面あった。それは、テニスとスカッシュの中間のようなパデルというラケット競技用のスペースだった。
「何も知らなかっただけに興味津々で、すぐにあれこれ調べ始めた。ルールもネット検索。“パデル中毒”の始まりだ!」
そう言って豪快に笑うクロップは、リバプールに戻ると当時の練習施設にコート設置をリクエスト。2020年の11月から利用している現在の練習場には、数も増えて2面のパデル専用コートが用意されている。
次々にやって来る試合への準備に頭を働かせるコーチングスタッフにとっては、絶好の「一息」ならぬ「一汗」の瞬間。周囲の壁からボールが跳ね返ってくるコートでラリーを続けながら、リフレッシュされる頭に試合に向けて使えるアイディアが閃くこともあるという。クロップと並ぶ重度の“中毒者”が、共同助監督のペピン・ラインダースである。このオランダ人の片腕は、ブレンダン・ロジャーズ前体制からの続投組だ。