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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
〈独占インタビュー〉名将クロップ55歳が明かす憧れとリアリズム「クライフとは一度でいいから…」「“勝ってなんぼの世界”は理解できるが」
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph byGetty Images
posted2022/05/27 17:15
リバプールを率いて7シーズン、自身二度目のCL制覇に挑むクロップが決戦を前に自らの哲学を語ってくれた
「コートに立てば真剣勝負。少しばかりペップ(ラインダースの愛称)の方が上手いが、私が勝つこともあるし、向こうは15歳も若い点を考慮してもらわないとな(苦笑)。
リバプールにやって来たときに、マイク・ゴードン(クラブオーナーの『フェンウェイ・スポーツ・グループ』社長)から、スタッフを2人残したいと言われたんだよ。1人はGKコーチのヨン・アヒテルブルフ。ジョニー(アヒテルブルフの愛称)は、まるですべてが網羅されたGK教則本だ。
非常に入念な男だから、今頃スタッフルームで2025-26シーズンに向けて練習メニューを考えているんじゃないか(笑)。もう1人が『育成部門とトップチームとの橋渡し役』と聞いていたペップだ。事前に彼の経歴は確認していたし、リバプールのU-16チームに仕込んだ非常に攻撃的なスタイルについても聞いていた。だから、“スペシャルなフットボール人”だと感じていたんだ。ゴードンからは馬も合うはずだからと言われていたが、就任して2カ月後には大きな間違いだと冗談で伝えたよ。
あなたは『ペップを気に入るだろう』と言っていましたが、そうはならなかった。実は……惚れ込んでいます! と言ってね(笑)。彼はとにかく前向きで、よく若い頃の自分を見ているような気になる。練習グラウンドでも、もの凄いレベルの情熱とエネルギーを発しながらセッションを仕切ってくれている」
伝統的なオランダのスタイルに強く惹かれている
前体制から受け継いだ2人のオランダ人スタッフは、クロップ体制のリバプールに良いバランスをもたらすことにもなった。
もう1人の助監督は、指揮官と同じドイツ人のペーター・クラビッツだ。出会いは現役当時の90年代に遡る。長年の補佐官は主にビデオ分析を担当している。
「もう長い付き合いになるが、今でも試合中にピート(クラビッツの愛称)の鋭い指摘に感心させられることがある。それほど賢くて、洞察力がある。才能に恵まれた指導者で、チームの大きな財産。個人的にも掛け替えのない存在と言える。と同時に、リバプールでコーチとしても著しい成長が見られるから、同じ指導者として大きな喜びを感じている。ペップも同じ。オランダとドイツの合弁事業に詳しいわけではないが、まず間違いなく、ここで我々が組んでいるタッグが最強だろう(苦笑)。
絶好の組み合わせだと思わないかい? 国際舞台で数多くのトロフィーを獲得しているドイツと、魅力的なサッカーという内容で成果を残しているオランダ。伝統的なオランダのスタイルには昔から強く惹かれている。アヤックスで形成されたサッカー哲学には誰もが傾倒しただろう。今で言うバルサ流の前身に当たるスタイルだ。実を言うと、私の息子も夢中になっていた。幼い頃にどこのサポーターだったのかと彼に訊けば、マインツでもドルトムントでもなく、アヤックスと答えるはずさ」