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「ベンゲルさんは上から目線ではなく…」シンガポール代表監督・西ヶ谷隆之が思い返す“名将の教え”「アジアカップで日本と対戦できたら」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/05/21 11:01
名古屋グランパス監督時代のアーセン・ベンゲル。西ヶ谷隆之が指導を受けたのはプロ1年目の短い期間だったが、同監督の哲学は今も指針になっている
サッカーはその国の文化を映す鏡のようなものだ。国民性や精神性はもちろん、気候や風土も深く関わってくる。
「東南アジアの国々に対して、集中力が切れるとサッカーが荒くなるとか、諦めてしまうとか言われますが、シンガポールにもそういうところはあるようです。最後までやり切るとか、我慢強さは身につけていかなければいけないでしょうね。サッカーのスタイルとしては、気候が暑いので日本みたいに全部アグレッシブにいけるわけではない。90分間ハードワークを続けるよりも、メリハリをつけることを意識したほうがいいかなと。そのなかで、ポイント、ポイントで修正できるところはあるでしょう。
と言っても、実際にコーチと話してみたら、『現実的にはこうなんだ』ということもあると思うので、自分が見ている映像と彼らが感じていることをすり合わせて、そのなかでどう改善するか。代表チームなので、トレーニングする時間は限られていますし」
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代表チームは集合と解散の繰り返しだ。シーズンを通してトレーニングを積めるクラブチームとは、異なるアプローチが必要になる。「そこの違いはありますが」と前置きしつつ、西ヶ谷が続ける。
「これまで指揮してきたチームでは、相手の良さを消しながら自分たちの強みをどうやって出すのか、ということを考えてきました。相手との力関係からそういう戦いをすることが多かったので、その点はシンガポール代表でも自分の強みとして発揮できるんじゃないかな、という根拠のない自信があります(笑)」
代表チームのスタッフには、吉田達磨前監督とともに働いた日本人の人材が残っている。国内リーグにはアルビレックス新潟のサテライトチームがあり、その他のクラブでも日本人選手が多くプレーしている。新天地で仕事を進めていく西ヶ谷に、日本人のネットワークは助けになりそうだ。
「何かを変えないと、自分にチャンスは巡ってこない」
シンガポール代表監督のポストが決まるまでは、専修大学のテクニカルアドバイザリーコーチを務めていた。東京都社会人リーグ2部のチームの指導もしていた。
「サッカーがうまくなりたいと思ってやっている学生や、仕事しながらサッカーをやっている社会人選手と触れ合うことができて、こちらまでピュアな気持ちになれたというか。チームマネジメントの幅が、改めて広がった気がします」