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大谷翔平「飛ばない印象はあります」…今季メジャーの“投高打低”現象を生んだ“公式球の操作”に、深まるMLB機構への不信感
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2022/05/20 06:00
エンゼルスは今季40試合を戦い、大谷は打率.247、本塁打8。去年よりもホームランのペースは落ちている(5月19日時点)
その一方で、ボールだけが理由ではないとの声もある。今季は、オフ期間のロックアウトの影響で春季キャンプが短縮され、実戦不足のまま、慌ただしく開幕を迎えた。例年、開幕直後は寒い環境での試合も多く、スロースターターの打者の調子が上がっていないケースも少なくない。ヤンキースのアーロン・ブーン監督は「過去1~2年で確かにボールは変わった」と認める反面、「投手がすばらしくなった」と、投手の技術向上を「打低」の一因に挙げる。打球に角度を付けるバレルゾーン理論が浸透し、アッパースイングの打者が増加した対策として、高めのストライクゾーンを攻めるなど、バッテリーの配球が変化してきたことも「投高」の理由とも言われる。今後、シーズンが進めば、打者の調子が上向く可能性もあるだけに、「飛ばないボール」に原因を特定するのは早計かもしれない。
ただ、機構側による「公式球の操作」への疑念は消えていない。というのも、今季は、全国ネットで放送される試合に限って「飛ぶボール」が使用されているとの一説も浮かび上がってきた。5月1日にスポーツ専門局「ESPN」で全米中継された「フィリーズ―メッツ戦」では、4本塁打が飛び交い、両軍合わせて16得点の打ち合いとなった。試合後、メッツのエリック・チャベス打撃コーチが、地元メディアに対し、「ハードに打っていなくても、ボールがより遠くへ飛んだ」と証言。データで確認しても、他の試合とは明らかに異なることを指摘した。
選手ら現場組が求めるのは、おそらく「飛ぶか」「飛ばないか」ではない。全球団が統一されたボールを使用するのであれば、条件は変わらない。だが、作為的に操作されるとすれば、納得できるはずもない。
機構と選手の溝は深まるばかり
2019年6月に、英国・ロンドンで行われた初の公式戦「ヤンキース対レッドソックス」は、2試合で両軍合計10本塁打、50得点(17−13、12−8)、いずれも試合時間4時間20分を超える乱打戦となった。この2試合で「極端に飛ぶボール」が使用されたことは、両軍選手の多くが認めており、悪しき前例として知られてきた。
もし、今後も頻繁にボールが変わるようなことがあれば、公平性は保たれない。
泥沼化した昨オフの労使交渉は収束したものの、機構側と選手側との間の不信感や深い溝は、公式戦が始まっても埋まっていない。