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大谷翔平に敗れた敵将「あの男がやったことがリアルだとは思えない…」投球データを調査して分かった“ある球種の劇的な増加”
posted2022/05/13 17:05
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
「野球にマリガンなんてないけど、昨日の(敗戦)は選手たちにマリガンを与えてやろうじゃないか。なぜなら……もう一度(映像で)見てみたが、あの男がやったことがリアルだとは思えないからだ。持ち球に関して言えば、2018年以来のベストだったし、もしも、あんたたちが許してくれるなら、洗い流したいぐらいだよ」
アレックス・コーラ監督(ボストン・レッドソックス)がそう言ったのは、5月6日のことだ。「マリガン」というのはゴルフで朝一番にミスショットした後、罰打無しで打ち直しすること。「あの男」とはもちろん、前日(5日)に7回6安打無失点、11奪三振でエンゼルスの8−0の勝利に貢献した投手・大谷翔平のことである。
レッドソックスはメジャーリーグ随一の人気地区、アメリカン・リーグ東地区の伝統球団だ。大谷翔平にとっては「2年連続MVP」のライバルとも言えるウラディミール・ゲレーロ・Jr.のいるブルージェイズ、毎年プレーオフ進出を現実的な目標として掲げているヤンキースやレイズなどが犇めく、屈指の激戦区でもある。
その一角を担うレッドソックスのコーラ監督は、2018年(2017年10月)から指揮を取っており、同年いきなり、ワールドシリーズ優勝を果たしている。ベンチコーチだったアストロズ時代の「サイン盗み疑惑」の責任を問われ、2020年シーズンこそ干されていたものの、就任以来、勝率五割以上を毎年キープしている敏腕監督でもある。
敵将は記者に反論して大谷を絶賛
46歳の「若き名将」が「やり直せるものならやり直したい」と溢したのは、すでにエンゼルスがボストンから去り、ホワイトソックスを迎え撃った日のことだ。
そこで地元メディアの一人が疑問を投げかける。
いくら大谷に7回無失点に抑えられたとしても、それは完全試合でもなければ、ノーヒッターでもない。ましてや大谷一人に完封されたわけでもない(マイク・マイヤーズが残る2イニングを完璧に抑えた)。そもそも、あなたは就任一年目の4月21日に、アスレチックス戦で左腕ショーン・マネイア(現パドレス)に2四球の走者のみで10三振、ノーヒッターを喫したじゃないか。あの日のマネイアより、昨日の大谷のパフォーマンスの方が上だというのか? と。
「そう思うね」とコーラ監督。
「オークランドでのノーヒッターより良かった。彼(大谷)は時速100マイルの速球と鋭いスライダー、そしてカーブを確信を持って投げていた」
敵将が使ったのは確信(Conviction)、つまり自信(Confidence)よりも確実で、強い表現だった。