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大谷翔平「飛ばない印象はあります」…今季メジャーの“投高打低”現象を生んだ“公式球の操作”に、深まるMLB機構への不信感
posted2022/05/20 06:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
メジャーが開幕して1カ月あまり。今季からは両リーグでDHが採用され、激しい点の取り合いの試合展開が多くなると思われていたが、周囲の予想に反して、「投高打低」の傾向が顕著になってきた。
5月16日終了時点で、平均打率は史上最低ペースの2割3分4厘。極端な守備シフトの影響があるとはいえ、ステロイド全盛期の2割7分1厘(1999年)、2割7分(2000年)と比較するまでもなく、「打低」が浮き彫りになってきた。本塁打数にしても、史上最多の6776本を記録した19年の1試合平均2.79本から1.92本へ激減。これに対し、近年4点台が続いていた防御率も平均3.83と、15年以来となる3点台を記録している。
その最大の要因が「飛ばないボール」にあるとの分析が、今や球界内では定説となってきた。
今季は、開幕直後からこれまでのボールとの違いを指摘する声が聞かれていた。スタットキャストなどデータ分析が日常化され、打球速度や角度によって飛距離も計算されるようになった。だが、今季は打球速度が高速とされる100マイル(約161キロ)前後でも柵越えしないケースが見られるなど、現場レベルでは早い時期から話題となっていた。
「なんか柔らかい、ソフトだな」
実際、エンゼルス大谷翔平も「去年より飛ばない印象はあります、見ている感じでも」と話し、感触として「なんか柔らかい、ソフトだなという印象はあります」と、率直な感想を口にした。
MLB機構による「公式球の操作」は、これまでも何度となく繰り返されてきた。本塁打数が激増した19年、反発係数の高い「飛ぶボール」が使用されていたことを受け、その後、専門家グループによる検証を経て改良。昨季は、これまでの在庫があったこともあり、2種類の公式球が使用されたが、今季は21年に製造された「飛ばないボール」の1種類だけが使用されるようになった。その事実も、結果的には事後承諾のような形で知れ渡ったに過ぎない。