濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
病院への迷惑取材、誹謗中傷も…大谷晋二郎“頚髄損傷のリング事故”をプロレス界はどう受け止めるべきか?「安易な“悪者探し”ではなく…」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/17 17:00
4月10日の両国大会、メインイベントに登場した大谷だったが、事故により大怪我を負ってしまう
ライオネス飛鳥「プロレスを見直すべき時に来ている」
あまりにも重い言葉だった。
記者発表に登壇したジャガー横田は、裕一郎氏の「プロレスとは、互いに信頼しあい全力でぶつかり合う姿で感動を与えるものだと思います」という言葉を引いて「プロレスは信頼関係で成り立っています。技をかけたほうが悪い、かけられたほうが悪いということではないと思っています」と語っている。
一方でジャガーとともにコメントしたライオネス飛鳥は「プロレスを見直すべき時に来ていると思います。今回のようなことは起きてはならない。アクシデントはつきものですが、そのアクシデントをゼロに近づけるのがプロ。ファンが求める過激さを提供するのではなく、自分たちのプロレスを楽しんでもらうという方向に持っていくべきではないでしょうか」と語っている。
ただ、飛鳥もやみくもに「今のプロレス」を批判したいわけではないだろう。飛鳥自身、80年代にクラッシュ・ギャルズで空手の打撃などを使い、それまでとは違うスタイルの女子プロレスを作り上げた。凶器の使用が認められるハードコアマッチを得意とした時代もある。
「引退した身ですが」
コメント中、飛鳥は何度かそう言った。現役時代にあれが危ない、これがダメと言われて辟易した経験もあるのではないか。プロレスを「見直す」作業は、あくまで今の選手が考えて取り組むべきこと。そんなスタンスが感じられた。
これからのプロレスは「何をどう見直すべきか」
では何をどう見直すべきなのか。「今のプロレスの技は危険すぎる」という声も聞くが、では「いつ」のプロレスに戻ればいいのか。どの技を禁止にしたらプロレスは危険ではなくなるのか。あるいは、どの程度の危険さなら許容できるのか。その基準は全団体、全レスラーで一律なのか。
筆者は試合をリングサイドで撮影し、複数の選手に取材した上で、今回の大谷の負傷は、いくつかの不幸な偶然が重なった結果としての事故だと考えている。ただそれも筆者の意見であって絶対ではない。必要なのは団体、業界による検証だ。
ZERO1の神尊代表取締役によると、映像での検証を行うつもりでいるそうだ。「長く業界にいるとアバウトになりがちなので、第三者的な方にも入っていただきたい」とも。「なぜ起きたか」に関して、今後はこの検証の結果を待ち、それをベースに話を進めるのが適切ではないか。