濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
病院への迷惑取材、誹謗中傷も…大谷晋二郎“頚髄損傷のリング事故”をプロレス界はどう受け止めるべきか?「安易な“悪者探し”ではなく…」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/05/17 17:00
4月10日の両国大会、メインイベントに登場した大谷だったが、事故により大怪我を負ってしまう
主治医としては「それで正しく伝わるとは限らない」という考えだという。一度は伝えられた「会話ができる」という点についても、この記者発表の時点では否定も肯定もできないことになった。
病院側に某スポーツ紙を騙った取材依頼が来ており、迷惑しているとも。そうしたことから「詮索や憶測での記事はやめてほしい」となった。つまり“興味本位で根掘り葉掘り”あるいは“限られた情報から憶測が一人歩き”という状態になるのを避けるため、情報提供自体を取りやめたということだ。「説明できない」ことを説明する質疑応答はあったが、いわゆる会見とは違うということで「記者発表」とされた。
大谷の兄が涙ながらに語ったこと
この記者発表では、応援募金に関して大谷の兄である裕一郎氏からのコメントも。
「プロレスラーである限り、このようなことが起きることは本人も家族も心のどこかに覚悟はしていたはずです。しかし本当に起きてしまうと、これほど辛いものなのかと……」
用意したメモを読み上げながら、言葉に詰まり、涙する裕一郎氏。仕事とはいえ、見るのが辛い姿だった。裕一郎氏は気丈にコメントを続ける。
「プロレスへの愛情が並々ならない大谷晋二郎は、決して何十回も防衛する最強チャンピオンではありません。
しかし、何度倒されても歯を食いしばって立ち上がる姿を見せ続け、諦めない心を我々に伝えてきてくれました。
今もあの試合中と同じ顔をして歯を食いしばって闘っています。
諦めたら負け、諦めずに何度でも立ち上がれば負けることはない!
そう言い続けてきました。
だからこれから人生で一番長い闘いに負けないために、これから何年かかろうが諦めずに闘わせてやりたい!
そのための皆様からの温かい支援だと思っています」
誹謗中傷も受けた対戦相手・杉浦への思い
試合直後、SNSで杉浦を批判する声があり、中には誹謗中傷にあたるようなものも見られたという。それに答える形でもあったのだろう。
「そして、杉浦選手へ
晋二郎のこと……ご心配いただくとともに心を痛めていらっしゃるとお察しします。しかし大谷晋二郎は逆に杉浦選手に申し訳ない! と思っているはずです。
プロレスとは、互いに信頼しあい全力でぶつかり合う姿で感動を与えるものだと思います。
だから杉浦選手は晋二郎を信頼して全力でぶつかった……当然のことです。
“こら大谷! 何年でも何十年でも待っててやるから立ち上がってこい!”と伝え続けて頂けることが本人にとって何よりの励みになります。
晋二郎の名誉のためにも今後の変わらぬ杉浦選手のご活躍を親族一同願っております」