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大谷翔平に敗れた敵将「あの男がやったことがリアルだとは思えない…」投球データを調査して分かった“ある球種の劇的な増加”
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2022/05/13 17:05
5月6日のレッドソックス戦に登板し、11奪三振の活躍で勝利に貢献した大谷翔平
〈データ〉今季の大谷は“ある球種”が劇的に増加
「配球を見てみよう。彼はボールを回転よく(変化させて)投げていたが、ラフィー(2番ラファエル・デバース)が逆方向に打ち(左前打)、ボギー(3番ザンダー・ボガーツ)が反対方向に打ち損ねると(右前打)、一転してJ.D.(4番マルティネス)には4球すべて速球を投げ込んだ(空振り三振)。いろんな持ち球を投げた後で、速球を外角に集めたんだよ。もう脱帽するしかないだろ」
この試合で大谷の速球は平均97.4マイル(約157キロ)、最速では100・3マイル(約161キロ)を計時した。レッドソックス打線から自己最多&今季メジャー最多の29回も空振りを奪っている。この日の球種の全体比と空振りを奪った数は以下のようになっている。
速球(4シーム) 47.5% 空振り10
スライダー 32.2% 空振り10
スプリット 11.1% 空振り5
カーブ 9.1% 空振り4
結果的に普段の41.3%よりも速球がやや多め、スライダーは31.3%と同程度、スプリットは普段の15.4%よりもやや少なめ、 カーブは同程度(9.9%)だった。元々、今季は速球の割合が去年よりも少なく、スライダーが多い傾向にあったのだが、スプリットに次ぐ「第4の球種」カーブが、3.6%から9.9%と劇的に増えたのが目立つ。
配球はともかく、コーラ監督が指摘した通り、5日の大谷は「いろんな持ち球」を投げ、そのすべてが機能していた。マネイアに9回無安打に抑えられた試合より、大谷の7回6安打の方が「上だった」と答えた理由も、ヒットで走者を出したところで、それ以上の攻略法が見つからなかったからだろう。
この試合、日米のメディアで「1919年にベーブ・ルースが『4番・投手』で先発出場して以来の、フェンウェイパークにおける『先発投手が打順1番から4番までで打った』」と歴史的な快挙として報じられたが、この試合でもっとも大事なことは、対戦相手がどう思ったかや、歴史的快挙ではなく、彼が7イニングを99球で乗り切ったことだろう。
「エース」の風格
今季のエンゼルス先発投手陣の最高パフォーマンスは、10日のレイズ戦で、22歳の新人左腕リード・デトマーズがノーヒッター達成ということになるだろうが、大谷は4月20日のアストロズ戦で12三振を奪いながら81球で6回1安打無失点の快投を演じてから、レッドソックス戦までで3連勝しており、「エース」の風格を感じさせる投球が続いている。
もしも、彼がこの安定感で投げ続けることができれば、オフ日をうまく使いながら中6日か中7日で、(3連勝中の18イニングを基準に考えるなら)シーズン終了までに20試合に先発し、120イニングは投げそうな勢いだ。すでに登板済みの6試合と合わせると、計26試合に先発して152イニング前後になる。