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母子家庭で育った大野雄大&柳裕也…中日のダブルエースが語る“球場招待プロジェクト”への思い「母親はホンマによく野球を続けさせてくれた」 

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渋谷真

渋谷真Makoto Shibutani

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photograph byIchisei Hiramatsu

posted2022/05/08 11:03

母子家庭で育った大野雄大&柳裕也…中日のダブルエースが語る“球場招待プロジェクト”への思い「母親はホンマによく野球を続けさせてくれた」<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

交通事故で父を失った経験をもつ中日・柳裕也。今年から“あるプロジェクト”をスタートさせた

「招待したといっても、こちらがうれしい気持ちに…」

 こちらもドラフト1位で自分の夢をかなえた。5月1日の広島戦(バンテリンドーム)では、先発して苦しみながらも7回を無失点。3勝目を手にした笑顔の先には、プロジェクトで招待された3家族8人がやはり笑顔で手を振っていた。今シーズンは日曜日を任されることが多く、2回目にして招待日と登板日が重なったのだ。柳は言った。

「招待したといっても、こちらがうれしい気持ちにさせてもらいました。そして自慢されるような選手にならなきゃいけないって、改めて思いました」

広がる支援活動の輪「大野さんに続きましたって」

 野球をやるのは金銭的な負担が大きい。グラブ、バット、スパイクだけでざっと10万円。ユニホーム、ウエアにクラブチームとなればグラウンドへの送迎や、チームによってはいまだに保護者のお茶当番がある。強豪校に進めば遠征費に寮費。それ以前に私立であれば学費も必要だ。大野や柳はプロに入り、活躍した。しかし、2人の母親は息子に才能があったからサポートしたわけではないはずだ。やりたいことをやらせてあげたい。母子家庭を理由に、あきらめさせたくはないと奮闘してきたに違いない。

 そうした親心を息子たちも知っている。和田、秋山、大野、柳。例えば貢献活動を広く知らしめることの意味は、決して好感度を上げるためではない。どこで、誰が、どんなことに困っているのか。開発途上国ではワクチンが足りない。それ以外にも戦禍、貧困、差別、迫害……。遠い国の嘆きから、すぐ近くの涙まで。和田の活動が大野の心に響いたように、彼らアスリートの声が誰かに届き、輪が広がることがある。

「柳に始めるんやな、って言ったときに、大野さんに続きましたって言ってくれたんです。それがうれしかった。でも、まだまだできることはたくさんあると思っているんです。自分の母親は、ホンマによく野球を続けさせてくれたと思います。だから、例えば使い古しでも野球用具を届けるとか、自分ができることを考えていきます」(大野)

 大野はさらなる活動の広がりを模索する。支援のうねりを起こすことも、一流アスリートならできる。大野プロジェクトは名古屋市が協力し、社会福祉法人「愛知県母子寡婦福祉連合会」が開催。柳プロジェクトは独立行政法人「自動車事故対策機構(NASVA)」と公益財団法人「交通遺児育英会」が協力している。対象試合など詳細は球団ホームページなどで確認できる。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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