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絶対王者・オジュウチョウサン11歳が復活…危険を伴う障害レースが、それでも“競走馬の救済の場”だと言える理由
posted2022/04/23 11:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Photostud
一度は輝きを失ったかに見えた「障害界の絶対王者」が鮮やかに復活し、多くのファンを感動させた――。
今年11歳になったオジュウチョウサン(牡、父ステイゴールド、美浦・和田正一郎厩舎)が、4月16日の中山グランドジャンプ(中山芝4250m、J・GI)で優勝。昨年5着に敗れた雪辱を果たし、自身の持つJ・GI最多勝記録を「9」に伸ばすと同時に、日本馬最高齢のJRA重賞制覇という偉業をなし遂げた。
オジュウチョウサンが驚異的な強さを見せつづけたことにより、平地レースの陰で目立たなかった障害レースに眩いスポットライトが当てられるようになった。障害レースの認知度のみならず、中山大障害、中山グランドジャンプといったJ・GIのステータスが上がったことも間違いない。
その一方で、先週日曜日に福島で行われた障害レースで、2レースつづけて落馬事故があり、複数の騎手が負傷し、馬が予後不良となったことで、安全性の再確認を求める声がSNSで上がるといった厳しい現実もある。
事故は平地でも発生するのだが、高速で競走しながら高い障害を飛越する障害レースは、危険を伴うことが前提となっているだけに、どうしても目立ってしまう。
それでも、障害レースは施行されつづける。筆者を含め、その迫力に惹かれているファンは多い。
今、障害レースの存在意義と、その魅力について、あらためて考えてみたい。
世界中で人気のある障害レース
障害レースは日本だけではなく、世界中で行われている。ただし、平地とは異なる障害専用の競馬場で行われている例が多い。
競馬発祥の地であるイギリスや、世界の馬産をリードするアイルランドなどでは、障害レースの人気が非常に高い。
障害レースの最高峰であるイギリスのグランドナショナルは、エプソムダービー、すなわち英国ダービーよりも馬券が売れているくらいなのだから、日本のファンとは、障害レースに対する見方が違うのだろう。
毎年4月に行われているグランドナショナルでは、障害を30回も飛越しながら、7000m近い距離を走らなければならない。40頭ほどの多頭数になることが普通で、数頭しか完走しないこともあるタフなレースだ。
今年が第175回というのも驚く。第1回が行われたのは1839年。日本の天保年間である。
歴史があり、完走すること自体が困難な舞台だからこそ、勝者が讃えられる。