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「プロにならなくてよかった、とまでは思いませんが…」 “元ドラフト候補のYouTuber”トクサンが語る「部活で野球漬け」の反動とは
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph bySports Graphic Number Web
posted2022/04/20 11:01
人気野球YouTuberのトクサン(左)と相棒のライパチ。いまも白球を追いかける彼らが語った「野球を嫌いにならない」ためのポイントとは
等身大で伝える「野球の面白さ」
――おふたりは野球が嫌いになったことはないんですか。
トクサン 僕はなかったかもしれないですね。一般的に言えば、辞めたくなる場面は多々あったと思います。スパルタ指導者による厳しい指導を受けたり、中学時代に自信をつけて帝京に入ったら自分より上手いヤツばかりで絶望したり……上下関係もそうですよね。ただ僕は、そういう“枝葉”が気にならなかった特殊な人種かもしれません。2回ほど高校時代に練習が辛くて逃げ出したことはありますが、なんとか踏ん張れた。幹の部分、つまり「野球が好き」という思いはまったく揺るぎませんでした。
ライパチ なにせトクサンは上手いですからね。僕は一度嫌いになりかけましたよ。しかも、草野球で。理由はまさに枝葉の部分でした。昔、天晴(二人が所属する草野球チーム)に、野球がうまい分、周りに求めるものも高い先輩がいて……。キャッチボールの際、僕の暴投が多すぎて、めちゃくちゃ怒られました。しまいにはちょっと外れても捕ってくれなくなって、こっちはなおさらうまく投げなきゃいけないと追い込まれて……。お互いに地獄です(笑)。
今にして思えば、高校までしか野球をやっていなかった僕にある種の厳しさ、難しさを教えてくれたんだと思います(笑)。もちろん、教えてくれた野球の技術は今でも活きていますよ。
――似たようなケースは、あらゆる年代の野球界にもある気がします。野球の上手い・下手によるヒエラルキーといいますか。
トクサン もちろん、野球が上手い人は私も尊敬しています。素人離れしたプレーを見たとき、「すごい」「こんなプレーできない」とも思う。でも、「だから何?」「その技術は社会にどう生きるの?」っていうスタンスも忘れちゃいけないと考えています。そのバランス感覚は持っておきたいですね。その点、僕らのチャンネルにとってライパチの存在が大きいんです。
ライパチ 僕のYouTuberとしての芸名は、野球が下手な人が言われがちな「ライトで8番打者」が由来なんですけど、一つわかったことがあって。「野球界ほとんどライパチ」なんです(笑)。大半は僕みたいな下手くそなんですよ。
でも、だからこそ等身大で野球の面白さを発信できるんじゃないかと。昔はライトフライが飛んでくるだけで怖かったけど、今はやっと捕れるようになった。その喜びを実体験として伝えられる、そう思えるようになったんです。