酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
佐々木朗希20歳の完全試合は「漫画超え史上最高の105球」 過去15例と比べても破天荒な理由の数々〈13連続奪三振+19K+164km〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2022/04/11 11:03
完全試合を達成した佐々木朗希。28年ぶり16人目の記録は、日本野球史に語り継がれる105球となった
13連続三振の記録内容を見ていこう。カッコ内は奪三振の決め球。
1回2死
3番 吉田正尚 0-2から空振り三振(フォーク)
2回
4番 ラベロ 1-2から空振り三振(フォーク)
5番 福田周平 2-2から空振り三振(フォーク)
6番 西村凌 1-2から空振り三振(フォーク)
3回
7番 紅林弘太郎 1-2から空振り三振(フォーク)
8番 福永奨 0-2から空振り三振(フォーク)
9番 宜保翔 1-2から空振り三振(速球)
4回
1番 後藤駿太 2-2から空振り三振(フォーク)
2番 バレラ 1-2から見逃し三振(速球)
3番 吉田正尚 0-2から空振り三振(フォーク)
5回
4番 ラベロ 1-2から見逃し三振(フォーク)
5番 福田周平 2-2から空振り三振(フォーク)
6番 西村凌 0-2から見逃し三振(速球)
最も三振しない強打者・吉田正尚から3奪三振
難敵・吉田正尚から大記録は始まっている。吉田は2つ三振を喫したが、1つ目は3球三振、2つ目も4球しか要していない。
13三振のうち空振り三振が10、そのうち9球がフォークだった。また速球での三振は3つだが、宜保翔に投げた速球は164km/hを記録した。
オリックスの打者は次第に戦意を喪失したのではないか。フォークはバットにかすらないし、速球は目にも止まらない。バットに当てることさえ至難だと思ったはずだ。1回の吉田から4回の後藤までに記録した「8者連続空振り三振」も史上初だった。
ちなみにオールスター戦では1971年7月17日、セ・リーグの江夏豊(阪神)がパ・リーグの強打者相手に9連続奪三振を奪っている。
そのほかにも佐々木朗希は「シーズン初登板から23イニング連続奪三振」、「3試合連続2ケタ奪三振」の球団タイ記録をマークしている。
夏の甲子園・県大会決勝の“登板回避”から3年後の快挙
大船渡高時代から163km/hの剛速球を投げた佐々木は、同郷の大谷翔平以来の逸材として注目を浴びた。しかし、酷使を恐れた大船渡の國保陽平監督は、甲子園出場が決まる試合で佐々木を投げさせなかった。これは地元・岩手県を中心に大きな議論を呼んだ。
そして佐々木は2019年4球団が競合する中、ドラフト1位でロッテに入団。吉井理人投手コーチ(現ピッチングコーディネーター)によって、肩肘の状態を慎重に見極めながら育成された。
昨年は一軍戦に初登板したものの、登板間隔は10日以上と長く、投球数もほぼ100球以内だった。
國保陽平監督、吉井理人コーチは、筑波大学大学院で川村卓准教授の教えを受けた同窓生であり、ともに逸材を大きく育てたいとの思いで佐々木を育成してきたのだ。
しかし両指導者も、まさかこんな破天荒な記録を達成するとは思っても見なかっただろう。日本プロ野球はこの日、間違いなく新たな1ページを開いた。
<佐々木朗希をめぐる名言編に続く>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。