甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭、恐るべきは“KKのPLに並ぶ1試合6本塁打”だけではない…「打率.538、5本塁打の3番が送りバント」など“2つの鉄則”
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/30 06:01
1試合タイ記録となる6本塁打を放った大阪桐蔭だが、その強さの本質は違う面に見える
送りバントをした松尾は昨秋の公式戦15試合で、ともにチームトップの打率.538、5本塁打を記録している。昨夏の甲子園でも2年生ながらバックスクリーンに本塁打を放っており、打線の核になる選手。
それでも、初回からバントのサインが出る。そして、チームに驚きはない。
主将の星子が当たり前のように振り返る。
「スコアリングポジションで1本打つことをチームとしてこだわっています。バッターが誰であっても送りバントはします。初回、立ち上がりを攻めようと話していたので2点を先制できてよかったです」
勝つ確率を最大限に高める方法を考える――相手先発の不安定な立ち上がりを狙う。相手に前進守備に取らせて、ヒットゾーンを広げる。丸山のタイムリーは内野が定位置であれば、おそらくアウトになる打球だった。松尾が送りバントを決めたことで奪った2得点。先制点の重みがチームで共有されている攻撃だった。
「簡単には四球を出さないように」
基本に忠実な戦い方は、初回の守りも同様だった。
大阪桐蔭の先発も今大会初めてマウンドに立つ前田悠伍。市和歌山の主将で1番・松村祥吾を3球で1ボール2ストライクと追い込む。ここから粘られ、フルカウントからの10球目。真ん中やや低めのチェンジアップでタイミングを外して空振り三振を奪う。続く、堀畑樹に対してもフルカウントとなったが、直球でセンターフライに打ち取った。
勝負球の球速は132キロ。松村への4球目に計測した直球より10キロも遅く、コントロールを重視したのは明らかだった。
「簡単には四球を出さないように、バッテリーで流れをつくっていこうと考えていました」
2点の援護をもらった直後のマウンドで、最も避けなければいけないのは四球による出塁。前田は鉄則を理解していた。そして、表現する力があった。
連戦のハンディがあった市和歌山に対し、大阪桐蔭には未知の不安があった。2回戦の相手だった広島商に新型コロナウイルスの感染者が確認されたため、不戦勝で準々決勝に進んだからだ。