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《繰り上げ出場・近江の躍進》ドラフト候補・山田陽翔に漂う“圧倒的主人公感”を見よ…! 監督「大舞台になるほど力を発揮する、それが山田」
posted2022/03/30 06:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
その短い激励は信頼の意味が込められているようで、どこか試されてもいるようだった。
「がんばってくれ」
センバツ開幕前日の3月17日。急遽、出場が決まった近江のキャプテン・山田陽翔(はると)は、新型コロナウイルスの集団感染で出場辞退を余儀なくされた京都国際のエース・森下瑠大から想いを託された。
ふたりは中学時代に何度か対戦経験があり、高校入学時からSNSで交流が始まったという。昨夏の甲子園ではともに主力としてベスト4に貢献。今年は「ドラフト候補」として脚光を浴びるライバル関係でもある。
山田が継いだ意志は、森下のものだけではない。
昨年のエース・岩佐直哉と島滝悠真のバッテリー、ファーストの新野翔大。ともに戦った先輩からも、出場が決まると「がんばってこいよ」とメッセージが届いた。
「来年(2022年)は俺らを超えてくれ」
敗北に打ちひしがれる自分を励ましてくれた先輩たちの心も、山田に響く。
「ああいう言葉をいただいて甲子園では一戦必勝で戦おうと思っていますし、去年の先輩を超えて日本一になれるように頑張ります」
多賀監督が明かした“山田の変貌”
代替出場とはいえ、山田にとってこのセンバツとは「歩みの証明」の舞台でもある。
始まりは、昨年の秋だった。
夏の甲子園で全5試合に登板した山田は、大会直後に右ひじを故障。今年のセンバツを懸けた秋季大会に登板できず、野手に専念したものの「あと1勝」でセンバツ出場の当確となる準々決勝で、金光大阪に6点差を逆転され、敗れた。キャプテンで4番も務める大黒柱である山田は、自らを責めた。
「夏の大会が終わってからケアを怠って怪我をしてしまったことが、反省点としてすごくありまして。でも、前を向くしかなかったので、気持ちを切らさずに練習しました」
シーズンオフ。山田はピッチングフォームを一から見直した。秋の不甲斐なさから、疲労を軽減する投げ方を追求する。監督の多賀章仁によると詳細はこうだ。