「真ん中の兄ちゃんはめっちゃストイック。スノーボードでもハーフパイプしかしないけど、一本の線としてずば抜けている感じですね。自分はレールも結構できるし、ジャンプもできるし、いろんなことができる」

「やっぱり嫌なことをやらないと成長しない」と気づいた

　楽しむ才能をついにスノーボードでも発揮した海祝は、「今はもう楽しくて仕方がない」と言うほどその魅力に取り憑かれている。しかも、楽しさの裏側にある苦労も引き受けられるようになった。

「楽しいことばっかりやっていてもうまくならないし、やっぱり嫌なことをやらないと成長しない部分もある。きついことばかりじゃ選手寿命は短くなると思うから、楽しいことも見つけて両立していくことが大事だと思ってます」

　スノーボードより学校の方が楽しいっしょ？と無邪気に思っていた当時の海祝だったら絶対にこんなことは言えなかっただろう。楽しいことときついこと。その割合を聞いてみると、きつい方が7、8割もあるという。

「大会に行っている時は地獄。本当にきついです。だから友達と北海道の山に行って、いいパウダーを滑って、そういうのが、なんて言うか……もう一番！（笑）　だからショーン（・ホワイト）ってすごかったと思うんですよ。そのきつい方を35歳まで続けてたんですもんね。でも、自分はそれ以上、40歳とかになるまでスノーボードをできる限りやっていきたいなと思います」

　いつかは軸足をそちらに移していくとして、しばらくはきつい思いとトレードオフで手にする楽しさに身を浸す覚悟はできている。そのためにも今、探し求めているものがある。オリンピックの舞台で世界にアピールした海祝の”スタイル”である。

（撮影＝榎本麻美）

〈後編に続く〉 

#2に続く

「ちょっと照れる感じはあるんですけど…」19歳平野海祝に聞く、最強の兄・平野歩夢を超えられるか？《世界記録メソッドの誕生秘話》

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