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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「ちょっと照れる感じはあるんですけど…」19歳平野海祝に聞く、最強の兄・平野歩夢を超えられるか?《世界記録メソッドの誕生秘話》
posted2022/03/31 11:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Asami Enomoto
スノーボードの楽しさに目覚めた平野海祝は、それにともなってW杯でも好成績を残し始め、ついに兄・歩夢とともに五輪の代表権を勝ち取った。
自分にしかできない滑り=スタイルを追求する面白さを理解し始めた彼にとって、北京五輪は自らのスタイルを世に知らしめるための最高のプレゼンの場となった。そこで見せたのは“世界記録”となる高さ7.4mの驚愕の『メソッド』。米NBCの中継で解説を務めた長野五輪代表のトッド・リチャーズは、Twitterにメソッドを決める海祝の写真とともに「今夜のフェイバリットモーメント」と投稿した。
このトリック一発で、海祝は(ひょっとしたらメダル以上に)世界の度肝を抜いたのだった。
「常に1位を目指してきたので、もう優勝を諦めたとかそういうことではなかったんですけど……」
海祝は決勝のルーティンの意図をこう語った。
「優勝は兄ちゃんに任せて、自分はちょっと違う方で、スタイルある滑りをみんなに見せていければいいなと思っていました」
兄には勝てない。だったら自分は別の頂点を目指す
北京五輪男子ハーフパイプ、海祝は9位で予選を突破した。練習日から海外勢のただならぬ気合を感じていただけに、予選はまず確実に決められるルーティンを優先させて結果を出した。
決勝で狙うべきはもちろん頂点。ただし、初出場の五輪、日本勢4人の中でも実績的には4番手と言える立場で代表入りしただけに、周囲との力関係を考えれば、無邪気に金メダルを狙うと言えないことは理解できていた。何よりも現時点で歩夢に及ばないことは、いつも近くにいる弟だからこそ誰よりも感じていた。
だったら自分は別の頂点を目指すしかない。常に1位を目指してきたからこその決断。そのための手段がルーティンの一発目で放つメソッドだった。