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“因縁の再戦”で3回KO勝ちを収めた寺地拳四朗の大変身… リベンジ成功の理由を参謀役が激白「ジャッジまかせにはしたくなかった」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byNaoki Fukuda

posted2022/03/21 17:02

“因縁の再戦”で3回KO勝ちを収めた寺地拳四朗の大変身… リベンジ成功の理由を参謀役が激白「ジャッジまかせにはしたくなかった」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

地元・京都で行われたダイレクトリマッチに勝利し、矢吹正道からベルトを奪還した寺地拳四朗。試合後には涙を流しながら喜びを語った

「さあジャッジはどう見る?」にはしたくなかった

 前回の試合は2021年の年間最高試合に選ばれる好試合ながら、加藤トレーナーにとっては納得のいかない試合だった。最も受け入れがたかったのは、4回までの採点でジャッジ2人が矢吹に40-36をつけ、残りが38-38のイーブンだったこと。この採点が大きな誤算となったのだが、不満とは別にしっかり採点は受け止めなければならない。ならば再戦はどうやって戦うのか。加藤トレーナーは考えに考えた末、次のような結論に達した。

「前回の通りにやっても埒があかないというか。向こうが待って、こっちは外からちょんちょん打って『さあジャッジはどう見る?』みたいな試合にはしたくなかった。そんな試合をするなら、こちらから攻めていって勝負するほうが分かりやすい。自分の力でこじあけていくようなボクシングです」

 自分の力でこじあけていく。それは戦う距離が近くなるということだ。矢吹のカウンターを避けるため、踏み込むのではなく、踏み込まなくてもパンチがあたる位置で戦い続ける。ハイガードと頭の振りは、そのボクシングを成功させるために必要だったのである。

 今までの戦い方を変えることに躊躇はなかったのか。加藤トレーナーは「勝てるからあの戦い方をしていたわけで、勝てないならあの戦い方をする必要性はない」と言い切る。トレーナーにも選手にも変なこだわりはなかった。

 ただし、新しい戦い方を実行できるかできないか、という問題は残る。はたして拳四朗はこれまでとかなり異なるスタイルを短期間で習得し、練習の成果を試合で発揮することができるのか。加藤トレーナーは「できる」と踏んだ。

「拳四朗は指示したことを実行する能力がすごく高い。それに、ああ見えてフィジカルが強い。もちろんバランスは抜群にいい。もともとの技術のない選手を一から変えるなら無理かもしれないけど、拳四朗なら必ずできる。体の使い方と意識さえ変えればできると思いました」

 加藤トレーナーはこうも説明した。

「今までの足を使うボクシングも、当たり前にできるわけじゃなくて、毎回試合に向けて練習して足の動きを作っていく。それが今回はガードを上げて前に出る動きに変わったということ。勝つために作り上げていく過程に変わりはないので、結果的に変わってはいるんですけど、“変える”という意識はそこまでありませんでした」

【次ページ】 敗れた矢吹「あんなにインファイトしてくるとは…」

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