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「早熟なのに大器晩成」DDT竹下幸之介(26)は“現代のジャンボ鶴田”なのか? ついに“敢闘賞”受賞した男の真価とは《デビュー10周年》
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/03/19 17:01
2021年「プロレス大賞」では敢闘賞を受賞し、3月20日のDDT旗揚げ25周年記念大会メインイベントに出場する竹下幸之介
「ゴールのないマラソンをひとりで走っているような感覚」
「プロレス大賞」の主要な賞は、どうしても新日本、全日本、ノアなど、老舗、もしくはメジャーと称される団体の選手から選ばれる傾向にある。もともとインディーだったDDTは、残念ながら“プロレス大賞を獲るような団体”とはまた別個で独自の盛り上がりを見せてきたため、竹下がどれだけDDT内で活躍しても他団体のトップ選手たちと比べる“モノサシ”がなく、その光が団体の外まで届きにくかったことも事実だ。
「だから僕はDDTで孤独な闘いがずっと続いていたんですよ。誰と比べて評価されるわけでもないし、ただただ僕がベストだと思うことをやり続けるしかなかった。KO-D無差別級王者として先輩も含めてみんな倒してしまったので、もう超えるものもなくなってしまったし。ゴールのないマラソンをひとりで走っているような感覚でしたね」
そんな竹下の前にひさしぶりに超えなければならない壁が現れる。2020年からDDTに本格参戦し、21年2月に選手兼ヘッドコーチとして入団した秋山準だ。
レジェンド秋山準を超え、2021年は敢闘賞獲得
秋山は90年代後半、ジャイアント馬場時代の全日本で、三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明の“四天王”と並ぶ“全日本5強”として活躍。2000年代からはノアでGHC王者に君臨しプロレス界のトップにたったばりばりのメジャーであり、50歳を超えてもトップの実力を保持するリビングレジェンド。竹下の真の実力を測るモノサシとしては最適の大物だ。
竹下はこの秋山という大きな壁に二度跳ね返され、一時はスランプに陥るも昨年8月21日の富士通スタジアム川崎大会において、三度目の正直でギブアップ勝ち。竹下は秋山を超えることでその実力が日本のトップクラスであることを証明し、2021年度の「プロレス大賞」で初の三賞受賞となる敢闘賞を獲得した。これはようやく“DDTの外”にも竹下の実力が正当に評価され始めた証と言えるだろう。
両国の遠藤戦は「答え合わせになる」
こうして本当の意味でDDTの押しも押されもせぬトップとなった竹下は、DDT旗揚げ25周年記念のビッグマッチ、3・20両国国技館大会のメインイベントで遠藤哲哉相手にKO-D無差別級王座防衛戦を行う。団体内に超えるべき相手がいなくなった若き孤高の王者にとって、この一戦はどんな意味を持った闘いなのか。
「僕と遠藤哲哉は同じ2012年デビューで今年10周年。その集大成ですね。僕と遠藤さんは、(かつてDDTのトップに君臨した)飯伏幸太、ケニー・オメガに触れた最後の世代で、あの二人が去ったあともサバイブして共にメインを張るようになったんですよ。でも、一緒の道を走ってきたわけではなく、彼には彼の10年があって、僕には僕の10年があり、走ってきた道が違うからこそ、お互いに『俺の道のほうが険しかった』と思っている。だから両国での試合は、お互いに走ってきた道が正しかったかどうかの答え合わせになるんじゃないかと思いますね」