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「ライスシャワーの最期に号泣したよ…」新日ジュニア王者エル・デスペラードが熱弁する“ウマ”への深い愛情《同名馬が新馬戦を快勝》
posted2022/03/19 11:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
大抵の話というのは、ジャンルの中で完結する。
しかし時に、ジャンルの枠を飛び越えることがある。狙ってそれを実現させるのは困難だが、ふとした瞬間に越えていくこともある。
新日本プロレスのIWGPジュニアヘビー級チャンピオン、エル・デスペラードは、ジャンルを超えた存在になった。
2月13日、あるニュースがプロレスファンを驚かせた。
『エルデスペラード、新馬戦に勝利!』
同日の阪神第4レースに組まれた新馬戦で、幸英明騎手が騎乗する5番人気のエルデスペラード号がダート1800mを1分57秒フラットで走り抜け、見事に勝利を収めたのだ。
「とうとうNumberから取材依頼が来たって思ったら、馬……。(高橋)ヒロムの時と全然違うじゃねーか!」
そう嘆きつつも、ならず者ルチャドールは取材に応じてくれた。
「ベルトはゴールじゃなかった」ならず者の現在地
プロレスラー、エル・デスペラードの存在感は強まり続けている。
2020年に『BEST OF THE SUPER Jr.』の決勝戦を日本武道館のメインで戦うと、昨年2月28日にはIWGPジュニアヘビー級のシングルのベルトを初獲得。飯伏幸太とIWGP世界ヘビー級初代王者の座を賭けて、武道館のメインで激突した。その後、ロビー・イーグルスにベルトを奪われるものの奪還し、今年の「1.4」ではヒロムを相手に防衛に成功。3月2日にはオカダ・カズチカと武道館のメインで王者対決を行った。
今や新日ジュニアを象徴する選手の1人として見られるようになった彼だが、ベルトを獲得して感じたことがあったという。
「ベルトを目指して戦っていた時は、それがゴールだった。でも、そのゴールにたどり着いた時に、ベルトを持ったからといって思ったより注目されたり重宝されたりしないんだな、と。試合の順番とか、新日本での扱われ方とか……」
かつて獣神サンダー・ライガーが団体の垣根を越えて『SUPER J-CUP』を開催したり、最近ではヒロムが東京ドームのメインでIWGPジュニアのタイトルマッチをすることが夢のひとつだと公言していたり、ジュニアの選手はジュニアという存在そのものを高めようという側面を持っていることもある。デスペラードから発せられる言葉からも、それを感じさせられることが増えた。
「前から思ってはいたんだ。ただ、ベルトを持ってないやつが言っても、『お前が言ったところで』って思うだろ。たとえば技も、リコシェやオスプレイみたいな馬鹿げたのじゃない限り、練習すれば誰でもできる。でも、『お前がそれやるのかよ』ってなることあるだろ? それと同じだ。どれだけ熱いことを言っていたとしても、『お前じゃないよ』って冷める。まあジュニアを面白くしたいというより、俺が楽しみたいんだけど」