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筒香嘉智は問題視…少年野球「飛ぶバット」への賛否をどう考える? 通算403本の本塁打王は「子どもたちにホームランの夢を見せてあげたい」 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph byGetty Images

posted2022/03/19 17:02

筒香嘉智は問題視…少年野球「飛ぶバット」への賛否をどう考える? 通算403本の本塁打王は「子どもたちにホームランの夢を見せてあげたい」<Number Web> photograph by Getty Images

少年野球で人気の「飛ぶバット」。「さすがに飛びすぎでは?」という疑問をどう考えればよいのだろうか?(※写真はイメージ)

「昔から『軟式野球はボールが飛ばず、点が入らないゲームが多くてつまらない』『たまに軟式野球をする人がうまくバットにボールを当てられず、ボテボテのゴロばかりで点数が入らない』などの声がありました。それを踏まえて連盟から『もう少し飛ぶバットを開発できないか』とメーカーへ要望した経緯があります」(全日本軟式野球連盟)

 こうした要望の末、2002年に複合バットのパイオニアとなる「ビヨンドマックス」(ミズノ)が発売された。ミズノ企画担当は開発にかける思いをこう語った。

「すべての野球プレーヤーにとって、やはり『飛び』というのは共通して求められるものですので、そこを追求するのが我々の使命だと思っています。ビヨンドマックスでは打球部にポリウレタン素材を使用したことで、反発係数を金属バットより8%向上させ、飛距離の大幅アップに成功しました。『飛び』を実現できれば、プレーヤーが喜びを得ることができると思いますし、勝利にもつながりますので、野球を楽しいと感じてもらえます。そうすれば野球人口の増加にも好影響を与えられ、野球界全体の発展にも貢献できると信じております」

20年で反発係数は“約30%アップ”

 その後もミズノではビヨンドマックスシリーズの開発を続けており、その最新作こそ、冒頭で山崎氏が手に入れたビヨンドマックスレガシー。シリーズ6代目となり、反発係数は金属バットより約30%もアップしているという。

 反発係数とは、2つの物体が衝突するとき、互いの速度がどう変化したかを比で表したもの。ごく単純化するためにバットを固定したと考えた場合、100km/hで投げられた球が、固定されたバットに当たって50km/hではねかえれば、そのバットの反発係数は0.5だ。

 一般に、軟式用金属バットの反発係数は0.3~0.35と言われているから、6代目ビヨンドの反発係数は推定で約0.39~0.45というところか。打球の飛距離は、打球の初速と角度で決まるため、ビヨンドをうまく使えば、さぞかし飛ぶのだろう。発売以来の20年で78万本を売った実績はダテではないのだ。

「野球を続けるにはマイナス」「反発係数の規定を設けるべき」

 こうした流れにアシックスやゼットなどの野球メーカーも追随し、複合バット市場では各社がしのぎを削っている。しかし、プレイヤーに飛距離という夢を授けた複合バットには、思わぬ批判が寄せられることになる。

「大人の野球初心者の間では、バットのどこに当てても、ある程度飛ばすことができるので画期的な製品として喜ばれたようです。一方で、もともとバッティングの基本がしっかりしているレベルの高い人は、ますます飛ばすようになり、アドバンテージが高まりすぎたという声も出ています」(全日本軟式野球連盟)

 野球技術や身体能力の格差を、飛ぶバットが拡大してしまったというわけだ。とはいえ、勝っても負けても、試合後に美味しくビールを飲めるのが土日の大人の軟式野球の良いところ。初心者の脱落を複合バットが防いでいるのなら、功績は大だろう。

 問題は、子どもたちだ。

【次ページ】 「野球を続けるにはマイナス」「反発係数の規定を設けるべき」

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