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筒香嘉智は問題視…少年野球「飛ぶバット」への賛否をどう考える? 通算403本の本塁打王は「子どもたちにホームランの夢を見せてあげたい」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2022/03/19 17:02
少年野球で人気の「飛ぶバット」。「さすがに飛びすぎでは?」という疑問をどう考えればよいのだろうか?(※写真はイメージ)
「ビヨンド、ずるい!」「お前らだって使ってるだろ」
「ビヨンドマックスレガシーを買う以前、もう5年以上前から複合バットを愛用していますよ。僕は各地の野球教室で子どもたちに指導をする際、彼らの目の前でホームランを打って見せたいんですが、最近は体の衰えもあり、複合バットの力を借りています。明らかに飛びますからね。子どもたちは目の前で見たホームランを一生忘れませんから、なんとしてもオーバーフェンスという夢を見せてあげたい」
かつてのホームラン王としては、忸怩たる部分はないのだろうか。
「現役時代のように木製バットでホームランを打てればいいんですが、それはもう無理なこと。一方で、軟式野球連盟のルール上、複合バットはOKの存在。ルールで認められていて、それを使えばホームランが打てるのなら使うのは当然のことです。野球教室の子どもたちから『ビヨンド、ずるい!』と突っ込まれることもありますけど、『お前らだってビヨンド使ってるだろ』って言い返してます」
そしてもちろん、ビヨンドを使えば誰でもホームランを打てるわけではない。
「野球教室に参加したチームの監督やコーチなどの大人にも試しに打たせますけど、彼らの打球は全然飛ばない。ビヨンドを使ってはいるけど、柵越えするような打球は、元プロ野球選手だからこそ飛ばせるんです。やっぱりプロはすごいんだぞというところは、子どもたちにはしっかり伝わっていると思います」
「さすがに飛びすぎでは?」の声も…
引退してからも子どもに夢を見せようとする姿勢には頭が下がる思いだが、大打者をも唸らせるほどに飛ぶこの複合バットは軟式野球界に広く普及し、試合の景色を大きく変えている。
たとえば、昨年12月に開催された「NPB12球団ジュニアトーナメント」では、小学校高学年の選手を中心としたチームながら15試合で史上最多となる51発のホームランが量産された。彼らのほとんどが複合バットを使用していたことは象徴的である。
両翼70m、センター85m(本来であれば両翼97.5m、センター120m)の位置にフェンスが設けられていたとはいえ、小学生離れした打球だろう。各地から選抜されたエリート選手たちによる試合ではあるものの、あまりの乱打ぶりに「さすがに飛びすぎでは?」などの意見が噴出した。
「点が入らなくてつまらない」という問題点
しかし、そもそも複合バット誕生の裏には、「飛びにくい軟式野球の飛距離を伸ばし、試合を面白くしたい」という連盟サイドの狙いがあった。この事実を踏まえなければ、飛ぶバットの公平な議論はできない。