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スポーツ界からの除外処分…ロシアの主張「人種差別」「政治とスポーツは切り離すべき」が大間違いである理由 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2022/03/15 17:00

スポーツ界からの除外処分…ロシアの主張「人種差別」「政治とスポーツは切り離すべき」が大間違いである理由<Number Web> photograph by Getty Images

国際スポーツから次々と除外処分を下されているロシアとベラルーシ。彼らは「スポーツと政治は切り離すべき」と主張しているが…

 第二次世界大戦後、1948年ロンドンで五輪が開催されたが、英国側は日本とドイツが行った侵略戦争を理由に、この2カ国を五輪に招待しなかった。除外された日本は、五輪と同じ日程で水泳の選手権を開催する対抗措置を取っている。

 長期にわたって資格停止になったのは、南アフリカだ。

 同国はアパルトヘイト政策で白人選手のみを代表選手に選んでいたため、1964年の東京五輪から除外処分に。その後、1991年に同国のアパルトヘイト法撤廃方針により、1992年バルセロナ五輪から復帰が認められたものの、28年もの間、国際スポーツに参加ができなかった。

 南アフリカの国技といわれるラグビーも同様で、W杯の第1回(1987年)、第2回(1991年)大会には出場が許されていない。

 ほかにもアフガニスタンが女性差別を理由に、またイラクが政府の介入などを理由に出場停止になったこともあり、ロシアだけがターゲットにされているわけではない。また差別や「ロシアが嫌いだから」という理由で処分を下しているわけではなく、規則や理念に沿って行っているだけだ。

 一方で、処分されなかったものの、疑問に感じるケースもある。

 2003年に米国がイラクに侵攻したにも関わらず、翌年のアテネ五輪・パラリンピックでは何の処分も受けなかった。いかなる理由があれ、他国に軍事侵攻してはいけないなら、米国や明確に支援をしていた英国も今回のロシアとベラルーシ同様に処分の対象にされるべきだったのではないだろうか。

 あくまでも推測になるが、多くの西側諸国が米国を支援していた点、またIOCのスポンサーに米国企業が名を連ねていることなども処分が下されなかった理由かもしれない。しかし今後、同じようなことがあった場合は(ないことを願っているけれど)ロシア以外の国も厳重に罰せられるべきだと思う。

そもそもドーピング問題が未だ解決されていない

 スポーツに関わる理由で処分を受けた国もある。 

 周知の通り、ロシアだ。

 そもそもロシアは今回の処分以前にドーピング問題を起こしており、2016年以降、五輪とパラリンピックを始め、多くの競技でロシアという国名での参加、国旗や国歌の使用も認められない、という処分を受けている。

 組織的なドーピングはフェアプレーの精神に欠ける、というのが理由だ。

 本来であればすべてが解決し、清浄化するまで資格停止でもおかしくないが、あえて『中立』という立場での参加が許可されたのは、クリーンにプレーしている選手にはチャンスをあげたい、という国際スポーツ団体からの配慮からだ。

 ちなみに世界反ドーピング機関のマクラーレン報告書によると、2011年から2015年夏までの間、ロシアでは国際レベルの1000人以上の選手がドーピングに関与していたと言われている。

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