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スポーツ界からの除外処分…ロシアの主張「人種差別」「政治とスポーツは切り離すべき」が大間違いである理由 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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posted2022/03/15 17:00

スポーツ界からの除外処分…ロシアの主張「人種差別」「政治とスポーツは切り離すべき」が大間違いである理由<Number Web> photograph by Getty Images

国際スポーツから次々と除外処分を下されているロシアとベラルーシ。彼らは「スポーツと政治は切り離すべき」と主張しているが…

 特に地元開催となった2014年ソチ五輪・パラリンピックではドーピング検査の検体のすり替えのほか、コーヒーや塩などを検体に混入させて検査不能にしたり、検体の紛失や破棄など、ありとあらゆる方法で検査を妨害した。

 しかし前述したような処分が下されたにも関わらず、それ以降、中立で出場する選手からもドーピングが発覚しており、ドーピングへの意識の変化、反ドーピング教育、そして組織自体が清浄化されているのかは、かなり疑わしい。

 直近では北京五輪のフィギュアスケートのROC代表、カミラ・ワリエワのケースがある。

 ワリエワは12月24、25日に行われたロシア選手権でドーピング検査を受けている。しかしロシア反ドーピング機関の検査ラボへの送付が遅れ、結果的に検査結果にも遅れが出た。

 ロシア側はコロナでの人手不足、そしてワリエワが五輪出場するにも関わらず、多くの検体と一緒に送付し、「早急で」というリストには載せていなかったと言う。前科があるだけに、どこまでが真実で、どこからが偽証なのかすら分からない。

 またワリエワの「祖父とコップを共有し、薬物が体内に入った」という苦し紛れの声明からも、ロシアのスポーツ界がいまだ汚染されているように感じられてしまう。

「スポーツと政治を切り離すべき」は全く説得力がない

 ロシアは他国と比べ、スポーツと政治が密接な関係の国の一つである。プーチンは2014年ソチ五輪・パラリンピック、サッカーW杯を誘致し、ロシアの国力をアピールしたほか、国威発揚にも使ってきた。スポーツを政治の駒の一つとして使ってきた国が、スポーツと政治を切り離すべき、と訴えても全く説得力はない。

 軍事侵攻を支援するような行動をとるロシア選手もいる。

 3月上旬の体操W杯で、中立として出場を認められたロシア選手がプーチンやロシア軍を支持する『Zマーク』を胸につけて表彰台に上がっている(※国際体操連盟はその後、ロシアとベラルーシを除外)。

 国際水泳連盟はほかの連盟と異なり、ロシアとベラルーシの中立での出場を認めているが、体操選手のような振る舞いがあれば、すぐに資格停止になり、国際舞台への復帰はさらに険しいものになるだろう。

 兎にも角にもロシアとベラルーシの復帰よりも、今はウクライナに1日も早く穏やかな生活が戻ることを願ってやまない。

※1  オリンピック憲章(https://www.joc.or.jp/olympism/charter/konpon_gensoku.html)

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