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プルシェンコの素顔を知るフィギュア海外記者が分析、“プーチン擁護発言”の真意とは? 知人も逮捕…ロシア“思想弾圧のリアル”
posted2022/03/15 17:15
![プルシェンコの素顔を知るフィギュア海外記者が分析、“プーチン擁護発言”の真意とは? 知人も逮捕…ロシア“思想弾圧のリアル”<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/1/a/1500wm/img_1a13a84fcacfa4646885f097d2924b54211246.jpg)
ウクライナ出身でアルベールビル五輪金メダリストのヴィクトール・ペトレンコと、プーチン支持者としても知られるプルシェンコ
text by
![田村明子](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/-/img_dad742229c0f3baadc6dfa58e9420a3d26573.jpg)
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵略に伴い、IOCは世界中の国際スポーツ連盟にロシアとベラルーシの国際大会からの締め出しを要請。ISU(国際スケート連盟)もそれに応え、今月末にフランスのモンペリエで開催される世界選手権を含む国際大会に、この二国の代表は出場させないことを決定した。
平昌オリンピック女子銀メダリスト、エフゲニア・メドベデワや、ソチオリンピックペアチャンピオンのタチアナ・ボロソジャルのように、いち早くウクライナ軍事侵略反対のメッセージを出したスケーターもいた。
その一方で、トリノオリンピック男子金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコ、同じくトリノのアイスダンス金メダリスト、タチアナ・ナフカのようにロシアの競技締め出しに対して、強い抗議の声を上げる過去の名選手たちもいる。
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一体、ロシアの日常は今どのようになっているのか。人々にはどのくらい情報が入っているのか。ロシア通であるドイツのジャーナリスト、タチアナ・フラード氏に聞いた。
◆◆◆
フラード氏はISUのライターも務め、ロシア語を含む6カ国語を話す。必要に応じてロシア選手の会見の通訳も務めてきたし、ロシア国内選手権だけでなく、ロシア国内のリンク取材も何年も行ってきた。同時にウクライナの選手とも交流が深く、今回の侵略戦争には、深く心を痛めているという。
「ウクライナの選手たちが心配で、可能な限り動向を追っています」
ニューヨークタイムズ紙は、ウクライナ出身の1992年アルベールビルオリンピック男子金メダリスト、ヴィクトール・ペトレンコが出身地のオデッサにメダル受賞30周年の記念イベントで里帰りした後にキエフで足止めされ、市内のアパートメントビルの地下に避難していることを報道。娘のヴィクトリア・ペトレンコとは、定期的に連絡が取れているという。だが現時点でまだ、国外に脱出したという報告はない。
抑圧された反戦運動…選手のSNSは急速にトーンダウン
「侵略が始まった当初は、ロシア国内でもウクライナの現状を知ることは可能でした。でも驚くほどの速さで西側の報道はブロックされていき、戦争に反対する声は押さえつけられて行ったのです」とフラード氏。
ウクライナ出身のタチアナ・ボロソジャルは、現在は夫でもあるマキシム・トランコフと共に、ロシア代表としてソチオリンピックでペアの金メダルを手にした。二人とも真っ先に、軍事侵略に抗議の声をあげた。
「マキシムは当初、自分のSNSのプロファイルを黒一色にして、戦争反対を訴える写真をあげていました。でもいつの間にかそれは取り下げられていました」
トランコフは、これまでもSNSを通して自分の意見をはっきり主張する人物だった。だが彼が早急に投稿を取り下げたというのは、明らかにどこかから強い圧力がかけられたのに違いない。また平和を訴えていたエフゲニア・メドベデワのSNSの声も、急速にトーンダウンしている。
「西側の自由な国にいて、どうして戦争反対の声をあげないのか、というのは簡単なこと。でも現地の事情は、私たちの環境とは全く違うことを理解しなくてはなりません」