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“柔道家”プーチンに贈られた、創始者・嘉納治五郎直筆の“2つの書”とは?「柔道精神との隔たりを感じざるを得ない」《ウクライナ選手は悲痛発信》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images/JMPA
posted2022/03/13 11:02
(左)“柔道家”としても知られていたプーチン大統領(右)ウクライナの柔道家ダリア・ビロディド
プーチンが本当に柔道の精神を知っているのであれば…
だから、柔道界でも今日の状況に複雑な思いを抱く人がいる。おおっぴらに意思を示さなくても、日本の柔道界とのかかわりを思い、柔道が裏切られたという悔しさに駆られる人もいる。それは事実としてある。また、日本の柔道界として、意思を発信していないことを歯がゆく思う人もいる。もしかしたら少なくはないかもしれない。ただ、現時点では意思表示はなされていない。
むろん、それをしたからといって、事態が動くというわけではない、かもしれない。
ただ、今日まで柔道を通じて深く交流してきたのも事実だ。日本柔道界の重鎮がプーチンから複数回、勲章を授与されてきた経緯もある。何よりも、プーチンが柔道の精神に、少なくとも言葉の上では敬意を払ってきたことも記録されている。であれば、柔道を通じての訴えはまるっきり無意味とも言えないのではないか。
あるいは少なくとも、「誰にも夢を奪わせない」と半年前に目標を見定めてスタートを切りながら、今、ロシアの侵攻に苦しむ柔道家に、どういう形であれ、思いを寄せることはできないことではない。
侵攻が続く中、相対する形で柔道家と「柔道家」がいる。決して遠いできごとではない。
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