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RIZIN2連敗の平本蓮「黙っていられるタイプじゃない」 朝倉未来に“噛みつき続けてきた男”の露呈した弱点と“真の実力”とは?
posted2022/03/13 17:05
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF
“100回の練習より1回の試合”は、スポーツにおける鉄則だ。“ジムのチャンピオン”という言葉も聞いたことがある。練習ではめっぽう強いのに、それが試合で発揮できない選手のことだ。
観客に囲まれ、あるいは中継もある試合と“身内”しか見ていないジムでは緊張感が違う。練習パートナーは仲間だが、試合の対戦相手は死に物狂いで自分を倒しにくる。「練習してきたことが出せなかった」は、試合後のコメントにおける頻出フレーズNo.1だ。試合で出すことができて初めて“実力”と呼べるのかもしれない。
上記のすべてが、平本蓮に当てはまった。3月6日、彼はMMA転向2戦目を行ない、鈴木千裕に判定で敗れた。2020年大晦日に続いて2連敗だ。
K-1のトップファイターがMMAへ。間違いなく大型ルーキーだ。デビュー戦は寝技に持ち込まれ完敗。そこから1年2カ月かけて、彼はレベルアップに取り組んできた。単身アメリカに渡って強豪たちとトレーニング。日本では引退したばかりの石渡伸太郎に師事する。得意の打撃にさらに磨きをかけるべく、試合前には武尊とのスパーリングも行なった。
「以前はカッコつけてばっかだったけど(初戦の負けで)自己破壊ができた」
「常に進化することを心に刻んできた」
試合に向け、平本は記者会見でそう語っている。石渡も、平本の日々の成長に太鼓判を押していた。
SNSで“噛みつき続けてきた男”が臨んだリング
舞台は昨年スタートした、RIZINの新ブランド『RIZIN LANDMARK』の第2回大会。会場の観客はごく少数、配信を主体とした大会だ。平本の試合はメインイベントで組まれた。中継したのは「RIZIN LIVE」ほか全9社。そうしたところからも注目度の高さがうかがえる。
今の平本は“K-1からやってきた大型ルーキー”という以上の存在だ。1年以上も試合をしていないのに、彼に関する話題は途切れなかった。SNSで周囲に噛みつき続けてきたのだ。RIZINで同階級の朝倉未来だけではない。タレントの武井壮、ラッパーの呂布カルマとも遠慮も忖度もなしにやり合った。
当然「試合で負けたままで何言ってんだ」と思う者もいる。だが逆に退かない姿勢に魅力を感じる者も。そして平本蓮が格闘家である以上、真価を決めるのは試合だ。SNSで何を言おうが、どれだけ叩かれようが、試合で勝てば報われる。負けたら何を言われるか分からないということでもある。
「俺が本当に強くなったら、この世界が変わると思ってきた」
「俺が真ん中に立つ日が来た」
そう言って臨んだリング。対峙した鈴木千裕はキックボクシングイベントKNOCK OUTのチャンピオンだ。もともとMMAからキックに転向、昨年から“二刀流ファイター”としてRIZINに参戦し始めた。RIZINで1勝1敗、MMAトータルではこれが10戦目となる。