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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「最近の子は、ほんとにすぐ野球部をやめる」高校野球界でタブー視されてきた“スカウト”が中学野球の現場に…どんな仕事をしている?
posted2022/02/24 17:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Getty Images
中学野球の現場で、ある高校の「野球部スカウト」に出会う。以前はタブー視されていた存在だというが、どんな仕事をしているのだろうか、スカウト本人に聞いてみた。
昨年の暮れから年明けの1月にかけて、足を運んだ「中学野球」の現場で、何人もの高校野球関係者の方たちにお会いする機会があった。
たいていは高校野球部の監督さんや部長先生だったが、その中に「スカウト」という肩書きが刷り込まれた名刺をくださった方が何人かおられた。
ちょっと驚いた。時代が変わったのかなぁ……とも思った。ただ、別にいやな感じはしなかった。
お正月をはさんだ冬の2、3カ月、アマチュア野球の関係者たちは意外と忙しい。大学なら高校のグラウンドに、高校野球の関係者なら中学野球の現場に足を運んで「これは!」と思う選手がいると「よかったらぜひ!」と声をかける。
あらかじめお目当てがいる場合、逆に、誰かいないかな……と様子を見にグラウンドに足を運ぶ場合、いずれにしても、関係者たちは近未来の戦力探しに、あちらこちらのグラウンドへ多忙な日々を送る。
この時期、高校や中学のグラウンドを訪れる関係者たちのお目当ては「2年生」だ。年が明けて、春には卒業していく「3年生」はすでに進路はほぼ決まっていて、その1学年下の2年生、つまりこの春の新3年生たちに、前年の秋から冬にかけて、早くも熱い視線が注がれる。
本業は別、経費以外はボランティア
名刺にスカウトとあった方に、具体的にどんな活動をされているのか、訊いてみた。
すると、その高校の野球部を運営しているスタッフの一員として、本業の休日を使って動いていると話す。
その方はOBで、監督さんと同じ時期にプレーをしていたよしみで、力になってあげようと始めたことで、本業は別にあるので経費以外はボランティア。肩書きがないと行った先で怪しまれるので、スカウトという肩書きと名刺をもらって、活動しているという。
「ウチは、監督のキャリアが長いので、シニアやボーイズに関しては、監督のほうがずっと顔も広いし、人的なパイプもたくさん持ってます。私はそれ以外の中学野球や、監督が動けない時に大会を見に行ったりしてるわけで、スカウトって言っても、私が交渉して決めてるわけじゃないんですよ」
高校野球界でスカウトはタブーとされてきた
なるほど、手伝っているわけか……と合点がいったが、私の心がプルプルッと揺れたのは、そういう存在がいることよりも、高校野球の現場で「スカウト」という表現を堂々と、名刺に肩書きとして刷り込んでいることだった。