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有馬記念の覇者が“乗馬”に…ブラストワンピースはなぜ種牡馬になれなかったのか? 血統専門家「タイトルがもうひとつあれば…」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAFLO
posted2022/02/12 06:00
2018年の有馬記念を制したブラストワンピースだが、引退後は種牡馬ではなく乗馬になることが発表された
需要があるのはスピードやダート適性に秀でた種牡馬
となると、やはり、父がハービンジャーということが問題なのか。
それに関して、サラブレッド血統センターの辻一郎氏はこう話す。
「血統の流行で言うと、ブラストワンピース同様クラブ法人の馬で、例えば今年の新種牡馬では安田記念とマイルチャンピオンシップを勝ったインディチャンプ。120万円の種付料ですが、スピード豊かな産駒が期待できそうです。同じくクリソベリルは300万円でもブックフル(種付予約が満口)です。ダートで確実に走りそうですし、今は地方競馬が活性化しているので、需要があるんですね」
インディチャンプの父はサンデーサイレンス直仔のステイゴールド。クリソベリルの父は同じくサンデー直仔のゴールドアリュール。飽和状態と言われているサンデーの血が入っているから敬遠される、というわけではないのだ。辻氏はつづける。
「クラブの馬ではありませんが、香港スプリントと高松宮記念を勝ったダノンスマッシュもすぐ満口になりました。それに対して、ハービンジャー直仔のブラストワンピースは、芝の中・長距離でいい、というイメージですよね。そこでの需要がないわけではないのですが、GIタイトルがもうひとつあって、凱旋門賞で入着でもしていれば、箔がついて、引き合いがあったかもしれません。ペルシアンナイトも種牡馬になっておらず、このままハービンジャーの父系としての血が途切れてしまうとしたら、個人的にはもったいないな、と思います」
父系の血の淘汰は凄まじく、リーディングサイアーでさえ、数代で途切れてしまうケースも珍しくない。例えば、1982年から11年連続JRAリーディングサイアー(地方競馬の成績を含める全国リーディングでは1989年にミルジョージが1位に)となったノーザンテーストも、仔アンバーシャダイ、孫メジロライアン、曾孫メジロブライトが種牡馬となるなど父系の血をつないだが、10年以上前に、日本からノーザンテースト系の種牡馬はいなくなってしまった。