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モーグル堀島行真のスゴさは藤井聡太竜王と共通? 14歳から知る元日本代表・伊藤みきが「腰が低くて将棋好き」と語る素顔
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki/JMPA,Hiroshi Kamaya
posted2022/02/08 17:01
素晴らしい滑りを見せた堀島行真。伊藤さんいわく、将棋の藤井聡太竜王と通ずるものがあるという
伊藤 そうなんです。今でもお父さんと将棋を指していると言っていました。実は私も藤井聡太竜王のファンなんです。発する言葉や淡々とした立ち振る舞いが好きなのですが、勝手に堀島選手と通ずるところがあるなと感じていて。自分の競技、それを含めたいろんなことを極める性格がそうで、自分の滑りや他選手の滑りの映像をずっと見ているんです。ものすごくまじめで、研究熱心。
あと、試合後のインタビューでもわかるように「腰が低い」ところも似ています(笑)。よく「藤井くんと行真が被るんだよね」と話すと、「将棋好きなんですか? 将棋しましょうよ」って誘ってきます。私は観る専門なので、相手をすることができないんですが……(笑)。そういう、いろんなことに興味を示すのも堀島選手のすごい部分かもしれません。
「他の選手と違うな」と思う準備の部分とは
――好奇心がある、ということでしょうか?
伊藤 まさに他の選手とは違うなと感じたのが、準備の部分でした。(昨年)10月のスイス遠征中に、IOCがあるローザンヌまで1泊かけて旅をしたそうです。自分が目指すオリンピックがどういう歴史を過ごしてきたのかを知るために、休日を使ってオリンピック・ミュージアムまで足を運んだようで。メダルを繋いできた先人たちの思いに、真正面から向き合ってみたかったんでしょうね。
私もその気持ちが少しわかるんです。平昌五輪を目指す過程で、壁にぶち当たっていた時、オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンが残した「人生にとって大切なことは成功することではなく努力することである」という言葉に救われたんです。良くても悪くても今の姿を見てもらう、見てもらうことに意義がある。そうやって、自分のやっていることの価値を落とし込むことができたからこそ、最後まで競技に集中することができました。
おそらく堀島選手も、そういう部分を自分の中で整理したのだと思います。彼が大会前に話していた「良い準備ができた」という言葉の裏には、そういう心の準備も含まれていたのかなと思いました。
スケートボード片手にレンタカーを借りて。「(ローザンヌまで)来てよかったです。元気が出ました」と、その様子を写真で送ってくれるあたりも可愛いですね(笑)。彼の身体能力、気持ちの作り方は当然すごいのですが、そういう姿勢があったからこそ、メダリストになれたのだと思います。この銅メダルが次の目標に向けて繋がっていくと良いなと思います。
伊藤みき(Miki Ito)
1987年7月20日、滋賀県生まれ。3歳からスキーを始め8歳でモーグルに転向。高校3年時の2006年にトリノ五輪に出場、05-06年シーズンのルーキーオブザイヤーに輝く。10年バンクーバー五輪にも出場。12-13シーズンはW杯猪苗代大会で初優勝、その後ノルウェーで開催された世界選手権モーグル、デュアルモーグル両種目で銀メダルを獲得し大ブレイク。14年ソチ五輪は日本代表に選出されるも怪我で棄権。19年に現役引退。プライベートでは18年に結婚。現在はスキー界に貢献するために幅広く活動中。
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