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《日本選手団最年長》43歳で12年ぶり3度目五輪出場の石崎琴美、ロコ・ソラーレのリザーブにして要の“5人目”が担う重責とは? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2022/02/10 06:00

《日本選手団最年長》43歳で12年ぶり3度目五輪出場の石崎琴美、ロコ・ソラーレのリザーブにして要の“5人目”が担う重責とは?<Number Web> photograph by JIJI PHOTO

昨年9月、北京五輪最終予選の代表決定戦に勝利し、ロコ・ソラーレのメンバーが石崎(中央)に抱きつく

 例えば、「ナイトプラクティス」という時間が設けられている。大会期間中、全試合が終わったあと、次の日に試合があるチームに設けられた練習時間だ。決して長い時間ではない。その中でフィフスが果たす最大の仕事はストーンチェックだ。カーリングのストーンは天然石からできていて、1つ1つのストーンに癖がある。同じラインに同じ強さで投げても、進む距離、曲がり具合に違いがあったりする。データをとりつつ癖を把握しておかなければ、戦略に狂いが生じる。だからチームが使用する8つのストーンすべてのチェックを、たいていは10分ないしは15分程度の短時間で行なうことが求められ、その技量が必要とされる。

 フィフスは、試合中にはゲームを見守り、その上での作業となるため、体力的にも負担は大きい。技量だけでなく、チームを支えたい、チームの勝利のために、という献身的な姿勢も要求される。

 バンクーバー五輪に出場したチーム青森のとき、石崎はリードを担っていた。チームメイトの評は、「メンタル的にもアップダウンが少なくて、穏やかで、練習も含めてやるべきことをしっかりやる人」。

 当時の石崎の印象的な言葉もある。

「それぞれの仕事をするのはもちろんですけど、例えばそれができないとき、どうやって相手を盛り上げられるか、チームが波に乗れない時にみんなでお互いを盛り上げられるかがチーム力だと思います。そしてよいところばかりを見るのではなく、悪いところも指摘し合える、それが建設的な話し合いとしてできるようなチームであれば、チーム力は上がっていくと思います。なんていうか、『各自じゃない』チームが出来上がると思います」

 チーム全体を見て、他の選手を思う視点を持ちつつ、チームの雰囲気に溶け込める選手でなければ、チームにとってプラスにならない。そういう意味でも石崎は適正と言えた。

氷上を離れて得た視点

 解説者としてのキャリアもまた、ロコ・ソラーレに必要な要素だった。各国の強豪チームについて把握し、そこで得た知見をチームに落としこめる。ロコ・ソラーレのことも解説者という視線で見て、感じてきたことを指摘できる。ロコ・ソラーレは時間をかけて熟成してきたチームでお互いをよく知るだけに、「分かっている」「分かりあっている」という感覚にとらわれる落とし穴も隠れている。ただ、そこに待ったをかけられるのが石崎の存在だ。

【次ページ】 初代優勝者に「あの名前」が…

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