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M-1に出たキングオブコント王者が評価する「オズワルドの2本目はなぜあれほど失速した?」「錦鯉さんは『猿』より『合コン』が正解だった」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph bySankei Shimbun
posted2022/02/06 17:01
写真は2013年のキングオブコント。6代目の王者になったかもめんたる。昨年はM-1に出場し、準々決勝まで進出した
う大 松本(人志)さんが、ファイナルジャッジで錦鯉に投票したとき、「最後は、いちばんバカバカしいのに」と言っていましたよね。松本さんの「バカ」の定義はわからないんですけど、僕の中でバカとは愚かということ。つまり、バカもバカなりにエゴイストで、やっぱり損得勘定で動いている。周りにどう見えるかは別として。そこが、かわいらしいというか、おもしろいところだと思うんです。合コンネタでは、そういうところが出てたじゃないですか。自分の思い通りにならなくて、つい女の子に意地悪を言ったり。自分主導の古今東西で主役になろうとしたり。ただ、2本目の「猿を捕まえたい」というテーマはバカの欲望と結びついていない気がしたんです。そこがシュールと言えばシュールなのかもしれませんが、共感しにくかったかなぁと。動物園から猿が10匹ぐらい脱走して、1匹1万円の懸賞金がかかってるとかなら、まだわかるんですけどね。もっと効率のいいアルバイトがありそうなものなのに、どうしても10万が必要だからって目先のもうけ話に飛びついちゃうみたいな。それなら、バカなりに一定のリアリティがあるじゃないですか。
なぜオズワルドはあんなに失速したのか
――ただ、最終決戦で錦鯉のあとに登場した1位通過のオズワルドは、ある番組で、自分たちが2本目を披露しているとき「お客さんが猿を探していた」という言い方をしていました。それぐらい会場はウケていて、錦鯉のネタに魅了されていたと。
う大 確かに、ああいう世界観もありはありなのかもしれませんね。ただ、お客さんが、錦鯉さんに持って行かれちゃって、オズワルドを待っていなかったというのは、そんなことはないと思いますよ。どれだけ前がウケていたとしても、1本目1位のコンビが出てくるわけですから。錦鯉さんよりもおもしろい漫才を見せてくれるに違いないと、ワクワクしていたはずです。ただ、オズワルドの2本目の漫才は、どこか歯車が狂っている感じがしました。なので、本人たちが、そんな風に錯覚しちゃっただけじゃないかな。期待値の高さに臆してしまった、というのもあったかも。今年はオズワルドの年だったね、というのがいちばん美しいエンディングだと思っていたのですが、あそこまで失速してしまうと王冠は被せられないですよね。オズワルドの1本目のネタははっきり覚えているんですけど、2本目のネタはどんなのだったか、思い出せないんですよ。そこに失速の原因がある気がするなぁ。ネタのよしあしもあるのかもしれませんが、1本目よりも伝える力が弱まっている気がした。漫才中に「お客さんが猿を探していた」ように見えたということは、自分たちを疑ってしまっている。そうなったらもうダメな気がしますね。
――オズワルドの1本目は、友達が欲しいという、ちょっとホラーチックなネタだったんですよね。
う大 あれは、すごくいいネタでした。これまでのネタは、ツッコミの伊藤(俊介)君の方がおいしい印象があったんです。でも今回はボケの畠中(悠)君もおいしかった。
――確かに、畠中さんの方が、むしろ目立っているようにも見えました。
う大 ネタによっては、片方ばっかりがおいしくなっちゃうときってあるんですよ。僕らが今回のM-1で選択したネタも、相方の槙尾(ユウスケ)はあまりおいしくない感じになっちゃった。ただ、両方がおいしくて80点より、片方だけがおいしいけど90点のほうがいいわけで。でもオズワルドの漫才を見て、100点を目指すなら、やっぱり両方おいしくないとダメなのかなと思わされました。2人が機能すると、ネタの奥行きというか、馬力が違いますもんね。今回のオズワルドの変化は、スポーツで言ったら、フォームを変えるぐらいの挑戦だったと思いますよ。相当、勇気がいる。それが僕らにできるかな。
<#3へ続く>