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18歳ネイマールの天才性とトラブルメーカーぶり 「PKキッカーを取り上げられて監督に罵声」事件とは〈30歳に〉 

text by

沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byGetty Images

posted2022/02/05 06:00

18歳ネイマールの天才性とトラブルメーカーぶり 「PKキッカーを取り上げられて監督に罵声」事件とは〈30歳に〉<Number Web> photograph by Getty Images

18歳時のネイマール。2010年のブラジル全国リーグでは31試合に出場し17得点を挙げる。翌年には南米年間最優秀選手賞にも選出された

「サッカーをするために生まれてきたような少年」

 14歳でフットサルをやめてサッカー一本に絞り、15歳の頃には、クラブ関係者、サントスのサポーターの間で「ネイマールがいつデビューするのか」が話題になった。彼の噂を聞いて、ある日、サントス出身のペレが下部組織の練習場を訪問。「素晴らしい素材。サッカーをするために生まれてきたような少年で、将来が非常に楽しみだ」と相好を崩し、抱きしめて激励した。

 下部組織時代は、常に年齢より上のカテゴリーに所属。'09年初めにトップチームに昇格し、冒頭のセンセーショナルなデビューを果たしたのである。

 驚異的なスピード、完璧なボールコントロール、細かくボールに触って自在にコースを変えるドリブルでマーカーの予測を裏切り、思い切り良くシュートを放つ――。彼が突出した才能の持ち主であるのは、誰の目にも明らかだった。相手チームは3人がかりでも抑え切れず、ファウルでやっと止める有様だった。当時はシミュレーションやダイビングとも無縁で、暴力的なファウルで倒されても淡々とプレーしていた。

 異次元のプレーを見せる一方で、サッカーを全身で楽しんでいた。サッカーが仕事、という自覚はあったはずだが、まるで子供が大好きな遊びに興じるように嬉々として練習に励み、試合に臨んでいた。

W杯敗退時「ネイマールがいれば」とドゥンガが叩かれた

 ただ、課題もあった。当時はまだ華奢で、DFに強く当たられると跳ね飛ばされることが少なくなかった。ストライカーというよりもドリブラーで、「何が何でもゴールをもぎ取るのだ」という貪欲さに欠けていた。しかしながら、まだ完成品ではないだけに、その伸びしろは計り知れなかった。

 国内メディアは、「将来、キング・ペレを追い越すかもしれない超逸材」と評価して彼の一挙手一投足を報じ、国民もこの若者に注目した。

 '10年6~7月に南アフリカで開催されたW杯。大会前、18歳のネイマールを「W杯へ招集すべきだ」という声は、日に日に高まっていた。しかし、ブラジル代表のドゥンガ監督(当時)は「まだ若く経験が足りない」と慎重な姿勢を崩さず、招集を見送った。

 この決定は強い批判を浴びたが、ネイマール本人は、「残念だけど、仕方がない。次の大会に出場できるよう、もっと練習するよ」と気丈に振る舞った。

 はたして、ブラジル代表は準々決勝でオランダ代表に1-2で敗退。国内メディアと国民の多くは、「もしネイマールがいたら、間違いなく別の結果になっていた」と敗軍の将ドゥンガをなじった。

【次ページ】 「彼は悪い意味でのモンスターになる」

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