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長州力が極秘会談で「ドームを押さえろ!」 新日本vsUインター、“日本プロレス史上最大の団体対抗戦”が電撃開催された“本当の理由”
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2022/02/06 06:01
最終第8試合、Uインターの絶対エース・高田との16分16秒の激闘を制した武藤が、誇らしげにベルトを掲げた
“異種格闘技戦”のような殺伐とした緊張感
これは単なる若手同士のタッグマッチではない。永田と石沢は元レスリングの全日本王者であり、Uインター側も桜庭はのちの総合格闘技PRIDEの英雄、金原もリングスのエースとして活躍する男だ。両団体が自信を持って送り出す実力者同士の“裏メイン”だったのである。
若くイケイケだった4人は、“物わかりのいい試合”はしない。プロレスのギリギリの範囲内で、それぞれが自分の強さを主張。Uインター側は打撃に定評があり、タイで特訓も積んだ金原がムエタイを前面に出してきたこともあり、異種格闘技戦のような、殺伐とした緊張感に包まれたスリリングな一戦となった。
この試合で猛威を振るったのが、永田のグレコローマン仕込みのスープレックスだ。金原の打撃をかいくぐり、胴タックルで組みつくと、アームロックを狙う金原をバックから強靭な背筋力を使って一気にジャーマンで投げ捨てた。試合後半には、桜庭も同じようにジャーマンで投げている。
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バックを取らせてのアームロックは、のちにPRIDEでグレイシー一族を次々と極めていった桜庭が、最も得意とする技。永田はそれを極められる前にジャーマンでぶん投げ、未遂に終わらせていたのだ。
「あの試合で僕が感じたのは、新日本とUインターの選手の体力的な違いですね。僕はアマチュア時代は82kg級でしたけど、あの頃は95kgくらいあったので、80kgちょっとの彼らがすごく軽く感じました。だからグレコローマンの力で引っこ抜いてぶん投げました。あれでドームが爆発して、気持ちよかったですよ」
2勝2敗で迎えた、長州力vs.安生洋二
試合は一進一退ながら、新日本優勢で進んだ。最後は石沢が桜庭の片足タックルでテイクダウンを奪われながらも、逆に下から三角絞めを極めてギブアップ勝ち。新日本ファンが8割近くを占めていたドームは、いきなり凄まじい盛り上がりとなった。
「あの9・23横浜と10・9ドームは、僕にとって出世試合ですね。あれで、ようやく永田裕志というレスラーをアピールできたと思います」
続く第2試合は大谷晋二郎が山本健一(喧一)を破り、新日本が連勝。第3試合は高山善廣が飯塚高史に勝利し、Uインターがようやく一矢報いた。第4試合は佐野直喜が、かつてのライバル獣神サンダー・ライガーを破った。
こうして2勝2敗の五分で迎えたのが、第5試合の長州力vs.安生洋二だった。
《続く》