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《誰もが知る名言》長州力「キレちゃいないよ」はこうして生まれた…スーパースターが激突した“プロレス全面対抗戦”とは何だったのか?

posted2022/02/06 06:02

 
《誰もが知る名言》長州力「キレちゃいないよ」はこうして生まれた…スーパースターが激突した“プロレス全面対抗戦”とは何だったのか?<Number Web> photograph by AFLO

新日本とUインターの全面対抗戦、2勝2敗で迎えた第5試合で長州力が安生洋二にサソリ固め

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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未だに語り継がれる新日本vsUインター、史上最大の全面対抗戦。2勝2敗の五分で迎えたのが、第5試合の長州力vs.安生洋二だった。そして物語のクライマックスは、天下分け目の大一番、武藤敬司vs.高田延彦へと進んでいく。伝説の“主人公”たちが今明かした、頂上決戦の意味とは――。(全2回の2回目/前回を読む)《初出『Sports Graphic Number』1006号(2020年7月2日発売)、肩書きなどすべて当時》

安生洋二「『Uの魂を売った』とか、さんざん批判もされた」

 安生洋二はこの日、大きな責任を感じながらリングに上がっていた。

「俺がヒクソンに道場破りで負けて、Uインターの客入りが落ちたことで、新日本との対抗戦をやらなきゃならなくなったわけだからね。あれをやったことで『Uの魂を売った』とか、さんざん批判もされましたけど、会社の存続の危機なんだからやるしかない。何を言われようが、どんな結果になろうが、リングに上がるしかないと思ってましたね」

 ヒクソンへの道場破り失敗後、安生はファンや関係者からすさまじい批判、そして誹謗中傷を浴びた。プロレスの強さのイメージを壊した戦犯と呼ばれ、「業界の面汚し」とののしられたのだ。

「だから横アリもドームも、観客の殺気がすごかった。とくに最初の横浜は、ブーイングの音量で、会場が本当に揺れていたからね。あれだけのブーイングを浴びた人間は、他にいないでしょう」

 ドームで組まれたカードは、いわば長州がそんな安生に制裁を加えることを期待された一戦。そして長州自身には、この試合で「Uを消す」という明確な目的があった。

 当時、UWF系の選手やマニアの間で、「安生最強説」が根強くあった。リング上の“格”では中堅でも、道場では無類の強さを誇り、多くの選手が一目置いていた。その評判は、長州も耳にしていただろう。U系の“裏番”である安生に完勝することで、長州はUWFの強さの幻想を消し去ろうとしたのだ。

長州力「キレちゃいないよ」

 Uインターとの対抗戦前、長州は「俺から正面タックル一本でも取れたら、あいつらの勝ちでいいぞ」とコメントしている。これも、長州が新日本の優位性を知らしめようとしていたからに他ならない。

「まあ、長州さんはレスリングに自信があるからそう言うんだろうけど、俺はそこで勝負してないからね。殴る蹴る、関節を極めるだから。価値観の違いですよ。長州さんがそう言うなら、こっちも『俺に一発でも膝蹴り入れて効かせたら、大したもんですよ』って言いたくなるよね」

 試合は、長州の一方的なペースで進んだ。予告通り、一度もテイクダウンは許さず、安生の打撃を涼しい顔で受け流す。最後はひねりを加えたバックドロップからリキラリアット、サソリ固めのフルコースで文字通りの完勝。ドームを埋め尽くす新日本ファンの溜飲を大いに下げた。

 試合後、長州は記者の「キレましたか?」との質問に、「キレちゃいないよ。安生も俺をキラしたくなかったんじゃないか。勇気ないよな」と余裕のコメント。この言葉からは「UWFはサブミッションだなんだと言っても、安生は俺に“仕掛けてこられなかった”ぞ」という意味合いが感じられた。

 もちろん、安生には最初から仕掛けるつもりなどなかったが、あの日の長州にちょっとした違和感はあったという。

【次ページ】 天下分け目の「武藤敬司vs.高田延彦」

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