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日本で“消息不明”となった名馬・ファーディナンドが遺したもの…元競走馬たちと五輪選手が目指す未来《GI馬も繋養する新天地》 

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カジリョウスケ

カジリョウスケRyosuke Kaji

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posted2022/02/04 11:00

日本で“消息不明”となった名馬・ファーディナンドが遺したもの…元競走馬たちと五輪選手が目指す未来《GI馬も繋養する新天地》<Number Web> photograph by Ryosuke KAJI

2021年10月、オールド・フレンズ・ジャパンに導入されたGI馬・デルタブルース

“憧れだった馬”と接点を保てる場所に

 原田は自身が運営する蒜山ホースパークを活用し、まず人材育成に着手した。岡山理科大学専門学校と提携し、施設内で実習を受けられるようにした。馬に触れることから始め、調教されたサラブレッドから乗馬を学び、そして引退した競走馬をリトレーニングすることで調教技術を学ぶ。

「馬に携わる仕事には向き・不向きがある。若者のキャリア形成にも影響があるので、ここで早い段階から馬とはどういう生き物か、馬の世界はどういうところか、イメージと現場のギャップを感じてもらうだけでも意味がある。その後は、競馬に関わってもいいし、もちろん馬術に関わってもいい。蒜山の地で学んだ若者がホースマンとなり、大きく飛び立てる場所にしたい」

 すでに競馬界に旅立とうとしている学生もいる。馬にとっても人にとってもキャリアを積んでいける場所にすることが原田の狙いだ。

 更に自治体の協力を得て、蒜山高原の広大な土地の開発に着手した。そこは日本有数のジャージー牛の飼育地。気温、水、草、それが揃っていれば十分で、馬にとってストレスのない優れた環境であるという。地理的にも京阪神、中国・四国地方の観光地・避暑地として機能している、馬・人にとっても優れた環境にある。つまり、関西圏の競馬ファンが週末に気軽に会いに行け、憧れだった馬と接点を保てる場所として機能できるポテンシャルがある。

「引退した馬がどんな暮らしをするかを見せたい。人が”馬の家”に入っていくようなイメージにしたい。競馬ファンとして訪れていただいてもいいし、馬のことを知りたいとただそれだけで訪れていただいてもいい。裾野をきちんと見せていくというのが我々の仕事かなと思っている」

「1番になれなかった馬たちの受け皿がなければいけない」

 日本では年間7000頭以上のサラブレッドが生産される。現役競走馬のキャパシティが変わらないとすれば、同数のサラブレッドが毎年競走馬を引退する計算になる。7000頭もの数の引退競走馬の受け皿を作ることは現実問題として厳しい。しかし、引退した競走馬1頭1頭が仕事や役割を持てる場所を作っていかなければいけないのもまた事実。だからこそ、これらを理解したうえで原田が目指すものが、マイケル・ブローウェンが作り上げたオールド・フレンズであり、馬術の調教技術を蓄積していくためのトレーニング施設としての機能をも併せ持った場所なのだろう。

「もちろん、サラブレッドとして生まれたのなら競馬で1番になって欲しい。世界で1番になってほしい。繁殖でもいい仔を残してほしい。でも、全ての馬が1番になれるわけではない。だから1番になれなかった馬たちのその後の受け皿がなければいけない。下支えがなければ日本の競馬も更に強くなっていくことができない」

 原田自身、自分ひとりだけの力では到底成し遂げられないような挑戦であることはわかっている。しかし、オールド・フレンズのスタッフやこれから蒜山の地を訪れてくれるファンがこの場所を育て、日本独自のオールド・フレンズが形作られていく。

「いつかはGIホースで馬術のグランプリホースを育ててみたい。競走馬引退後に繁殖に上がることだけが選択肢ではない。次の世界(セカンドキャリア)の魅力を作り、その価値観を変えていきたい」

 競走馬引退後のサラブレッドのキャリア形成が、「保護」という形で誰かの負担を伴っているままでは限界がある。観光や乗馬という世の中に必要とされる分野にシフトさせ、必要なインフラを整えて持続可能な事業として成立させることがオールド・フレンズ・ジャパンが目指す未来の姿なのだ。

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