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イチロー氏への質問「なぜ今もそこまでハードなトレーニングを?」高校生プロジェクトの裏で語った“頭を使わない野球への危機感” 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2021/12/29 17:08

イチロー氏への質問「なぜ今もそこまでハードなトレーニングを?」高校生プロジェクトの裏で語った“頭を使わない野球への危機感”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

女子高校選抜との試合にて投球するイチローさん

 米国ではマリナーズの会長付き特別補佐兼インストラクターとして、キャンプインからシーズン終了まで現役選手たちを支えている。その指導はアドバイスだけでなく、常に選手とともに体を動かし、走攻守において実演指導を行なう。だから、イチローさんの球場入りはユニフォーム組では誰よりも早い。選手の2時間前に球場入りし、初動負荷理論の特殊マシーンは今でもイチローさんの体を支え続け現役時代同様のトレーニングを自らに課す。メジャー歴代23位の3089安打を放ち、資格取得初年度となる2025年には野球殿堂入り間違いなしと謳われるレジェンドでありながら、ハードなトレーニングを続けるイチローさんに聞いたことがある。

なぜ、今もイチローさんはハードトレーニングを続けるのか?

「なぜ、今もそこまでハードなトレーニングを続けているのですか」

 答えはシンプルだった。

「選手に求められたら、実際に動いて見せてあげたいですからね。それができれば説得力が増しますから」

 昨オフの智弁和歌山から始まった高校生への指導でも、常に自らが動き、打って、投げて、走っている。「見せる」、「感じさせる」、「考えさせる」。これがイチローさんの指導における3原則だ。

 昨今のメジャーでは「スタットキャスト」などのハイテク機器の導入により、投打走のすべてが数値化され、専門のアナリストによって分析されているのはご存じの通りだ。加えて、ベースボール・オペレーションのお偉いさんまでもが、アイビーリーグ出身の野球経験の乏しい秀才で固められ、選手には弾き出されたデータ通りにプレーすることを求めている。テレビなどで選手が帽子の中に隠してあるアンチョコを目にし、打者ごとに守備位置を変えているシーンを見たことのある方も多いと思うが、自らが準備し、考え、動く野球から、命令通りに従う野球へと変遷を続けている。そんな昨今のメジャーの野球に対し、イチローさんは2019年の引退会見でこんな言葉を投げかけた。

【次ページ】 イチローさんが投げかけた「頭を使わない野球への危機感」

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