Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ポジショナルプレーの核心は「全員で一緒に旅をしろ」 ペップ流を知り、バルサ要職を務めたアルベル新監督のFC東京変革案
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/01/14 11:00
熱量を感じさせる語り口のアルベル監督。バルサのエッセンスを持ったカタルーニャ人指揮官は、どう日本の首都クラブを変革するのか
FC東京はディエゴ・オリヴェイラ、永井謙佑、山下敬大といった優れたストライカーを擁しているが、「彼らは決定力が高いことを改めて証明する必要がある」という。
「カウンターアタックはシュートを放つ際にスペースがあるものですが、2022シーズンは押し込むゲームが増えるでしょう。そうなると、相手ゴール前のスペースは狭くなります」
それでも仕留められるのかどうか――。
これまでとは求められる決定力が異なるというわけだ。
「優勝を約束するようなことはしない」
アルベル監督はきっぱりと言う。
「日本では誰もが『優勝を目指します』と言うことには驚きました」とも。
思い描くのは、チームのみならず、クラブ全体の長期的な成長である。
「約束できるのは、明確なプレースタイルを植え付け、常に優勝争いに関われるだけの力を備えさせ、クラブを成長させること。アカデミー出身の選手を重視し、質の高い外国人選手を補強し、私のプレースタイルに適した日本人選手を補強しながら継続的に成長していく」
クラブ全体が継続的に成長すれば、経営規模の成長を促すことができ、ひいては優勝を目指せるようになるということだろう。
「最近はクロップに注目しています」
一朝一夕にクラブを強くすることはできない。
「私は遅かれ早かれ、このクラブを、この街を、この国を去ります。東京の人々のためのクラブであるFC東京を育てること、それが私の使命です」
影響を受けた指導者は、ヨハン・クライフ、アリーゴ・サッキ、グアルディオラだが、「最近は(ユルゲン・)クロップに注目しています」と指揮官は貪欲に学び続けている。
「進化を止めないからです。ドルトムントを率いていた頃よりも成長しています。それはグアルディオラにも言えること。私も成長を止めたくありません」
だからこそ、日本で新しい挑戦の旅を始めたのだろう。
2019年にはポジショナルプレーを導入した横浜F・マリノスが15年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。3連覇を阻まれた川崎フロンターレも立ち位置を重視したサッカーに磨きをかけ、20年、21年に再び2連覇を達成した。
サガン鳥栖、大分トリニータ、ヴィッセル神戸、徳島ヴォルティス……と攻守においてロジカルにデザインされたチームが増えている。浦和レッズもスペイン人のリカルド・ロドリゲス監督を招聘し、ポジショナルプレーをベースにしたスタイルに舵を切った。
どんなサッカーを志向するのかまだ分からないが、ブラジル路線を続けてきた鹿島アントラーズでさえも今季、初めてヨーロッパからスイス人監督を連れてきた。
Jリーグには今、間違いなく変革の風が吹いている。
その風が首都のクラブに及ぶのも当然のことだ。
果たして本当に変われるのか――。
サッカー界でも首都にふさわしい地位を築こうとするFC東京の変化を、ピッチ内外で確認したい。
(※FC東京公式サイトでもアルベル監督インタビューをご覧になれます)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。