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プロポーズ直後の試合が、あのゼロックス杯…“嫌われた審判”家本政明48歳、大バッシング騒動を支えた妻への感謝とこれからの野望
posted2022/01/13 17:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
昨シーズン限りで国内トップリーグを担当する審判員を退いた、プロフェッショナルレフェリーの家本政明(48歳)。判定を巡った抗議やバッシングに遭いながらも、笛を吹き続けてきた男の半生を今、改めて振り返る。全3回の#3(#1、#2へ)
2020年シーズンのJ1最終節を終えて1週間後だった。家本政明はあと1年限りで第一線を退く決意を固め、それを妻に告げた。
あっさりと受け入れてくれた。
「妻からは“お疲れさま”と言ってもらいました。次に何をやるかは具体的に見えていない。それでも“1ミリも心配していない。何をするのか逆に楽しみ”と。凄い人だなって思います(笑)」
妻の反応は予想したとおりではあった。というのも、自分が出した結論に反対されたことは今まで一度もないからだ。
思えば彼女にプロポーズをして初めて試合に招待したのが、あの2008年のゼロックススーパーカップだった。大荒れの試合の“主人公”となったレフェリーにはブーイングや罵声が飛び交った。スタンドにいた彼女の耳にも届いていた。これまでサッカーに対する関心がまるでなかった婚約者にしてみれば、ショッキングな出来事だったに違いない。
事態が大きくなったことでJリーグの担当割り当ても当面見送られた。挙式も延期しなければならなくなった。それでも妻になる人は会えばいつもどおりに温かく笑顔で接してくれた。ありがたかった。もう一度レフェリーとして、あのフィールドに立ってサッカーを楽しみたいと思えるようになったのも彼女の存在があったからだ。
その年の11月に入籍を済ませ、翌年に結婚式を挙げた。あれから10年以上、ずっと支えてくれた。