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ポジショナルプレーの核心は「全員で一緒に旅をしろ」 ペップ流を知り、バルサ要職を務めたアルベル新監督のFC東京変革案
posted2022/01/14 11:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
予定していた45分をとうに過ぎ、1時間半に達したインタビュー時間は、指揮官のサッカー観とちょっとばかりのユーモアに満ちていた。
「もし、自分は走る必要がないくらい素晴らしい選手だと思っている選手がいるなら、私はその選手に(ジョゼップ・)グアルディオラの電話番号を渡そうと思います」
そう言って、スペイン・カタルーニャ州出身の指揮官はニヤリと笑った。
「ただ、実際には世界中を見渡しても、走らなくていい選手はひとりしかいない。リオネル・メッシのことです」
むろんジョークではあるが、単なるジョークに聞こえないのは彼の経歴のせいだろうか。
バルサのアカデミーダイレクターを務めた経歴
グアルディオラの古巣であるバルサのアカデミーでコーチを務めたのち、アカデミーダイレクターに就任。さらにグアルディオラの右腕だったドメネク・トレントがニューヨーク・シティの監督に就いた際には、コーチとしてサポートした――。
FC東京の新指揮官、アルベル・プッチ・オルトネダは、そんな経歴の持ち主なのだ。
バルサのアカデミーと言えば、グアルディオラやシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、メッシを輩出した育成機関である。
そのダイレクターの役職は育成年代における世界で最も重要なポストであり、日本の至宝をバルサに招き入れたのも、このカタルーニャ人監督だった。
「10歳だった久保建英をバルサは獲得しましたが、それを決めたのが私でした。その久保がバルサのあとに所属したクラブに私が来たというのは、美しいストーリーだと思います。彼がバルサに戻らなかったのは、残念ですが」
ここでも指揮官は、老獪な笑みをたたえた。「美しいストーリー」と表現すれば、あなたは記事にしやすいんじゃないですか、と言わんばかりに。
リスペクトのある国や街で、魅力的なプロジェクトを
バルサのアカデミーダイレクターを退任し、ガボン代表のテクニカルディレクター、アンゴラのペトロ・デ・ルアンダのアドバイザー、ニューヨーク・シティのコーチを歴任したアルベルには、新たな野心が芽生えていた。
自分も監督に挑戦したい――。
「でも、どこでもよかったわけではありません」
リスペクトのある国や街で、魅力的なプロジェクトに関わりたい。そんな思いを抱いていたとき、J2のアルビレックス新潟からオファーが届き、2020年に来日を果たす。
標榜したのはバルサと同じ、ポジショナルプレーをベースとした攻撃的なスタイル。
2シーズンを戦い、残念ながらJ1昇格はならなかったが、ファン・サポーターがスタジアムに足を運びたくなるような、自分たちのチームを誇りに思えるような基盤を作り上げたのは間違いない。