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戦力外から4年、起業を経てDeNAコーチへ 小杉陽太が明かす選手時代の“後悔”「もっとデータを信用していたら…」《本人寄稿》
text by
小杉陽太Yota Kosugi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/12/20 11:00
2017年に現役を引退し、来季からDeNAの二軍投手コーチの就任する小杉陽太(写真は2016年)
しかし、現状日本ではユニフォームを着ているか、着ていないかによって現場での説得力が多少なりとも変わるところがあるように思う。私自身、そんな場面を後述の活動の中で何度も見聞きしてきた。
そうした状況下で、アナリストが導き出してくれた情報を選手たちが受け取りやすい形で伝え、選手からも気兼ねなくデータを求められるポジションを担いたいと思った。
さらに、ベイスターズは “データ活用”に力を入れているチームだ。ここには私しかできない仕事があり、球界の未来を変えられる可能性がある。そう考えて、オファーを受諾したのだった。
自分のようなケースを「防げる」かもしれない
そもそもデータに興味を持ったきっかけは、現役時代に観た映画『マネーボール』だった。
同作は「セイバーメトリクス」(野球データを統計学から分析し、選手の能力やチーム戦略を考える手法)を用いたマネジメントが主の物語。選手個々のパフォーマンスアップに向けたデータ活用とは異なるが、「データの可能性」という点で固定観念が覆された。
とはいえ、現役時代はデータに関心がある程度だった。今でこそデータ革命と謳われる日本だが、当時はまだ環境も整っておらず、普及していなかった。私自身、最後まで自分の経験と感覚に頼り、もがき続けた9年間のプロ生活だったように思う。
引退後、あらためて自分のプロ野球生活を振り返る中で、ふとデータについて調べ始めた。独学で勉強し、論文を漁り、有識者に話を聞きに行った。そして学ぶほど、データの可能性を強く感じるようになった。
特に感銘を受けたのが、3Dの分析(トラッキングデータ)をもとに、ボールの回転数や変化量を可視化できるツール「ラプソード」だ。自分をいわば“実験台”として仮説を立て、ラプソードによる分析と活用法を学んだ。
自分の球質が可視化されると、現役時代にできなかったことができるようになった。投げたい変化球を数センチ単位に微調整して投げ分けられ、ストレートの質も格段に上がった。