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野球クロスロードBACK NUMBER
打点王&コメント王・島内宏明の「名言ベスト2021」、栄えあるNo.1は? 楽天広報「当初は『こんなん、本当に出していいんか!?』と」
posted2021/12/20 06:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Sankei Shimbun
あの時。2013年9月。
楽天は球団初のパ・リーグ制覇へ向け、独走態勢に入ろうとしていた。しかし、本来ならば主力として試合に出ているはずの彼の姿が、そこにはなかった。
彼――当時プロ2年目の島内宏明は、ファームにいた。
益田広報が見た打点王・島内の若かりし頃
13日のオリックス戦の9回、アーロム・バルディリスのフライを果敢に捕りに行った際に左肩を負傷。翌日に仙台市内の病院で検査を受け、左肩関節唇損傷で全治6~8週間との診断結果を突きつけられたのである。
この時点で97試合に出場しており、打率2割8分4厘、6本塁打、38打点。怪我さえなければ、「球団生え抜き初の2桁本塁打」の栄誉は、茂木栄五郎(17年)ではなく島内が手にしていたはずなのである、多分。
メランコリー。
ファンであれば、誰だってそんな島内の胸中を推し量り、悲しみを共有したはず。
「いや」
ドスの利いた声、三度(前編参照)。
そう否定するのは、球団広報の益田大介である。この年、二軍野手コーチとして若手たちとともに汗と泥にまみれていた指導者は、島内に未来を見ていた。
「“あんな感じ”ですけど、野球に対してはまじめに取り組んでいましたし、リハビリも頑張っていました。当時からバッティングはよかったし、守備もそつなくこなせて走れる選手だったので、『将来的にチームの主力になるんだろうな』という目で見ていました」
コメント取り当初は「本当に出していいんか!?」
肩を怪我しても真顔で現実を受け入れ、冷静な表情で汗を拭いながら淡々とリハビリに明け暮れた、その姿。益田コーチの慧眼通り、不動のレギュラーとなった島内は今季、打点王を獲得した。当時から「あんな感じ」と見抜いていただけに、あのフリーダムかつ時にエキセントリックでファンタスティックな、オリジナリティ溢れる名調子も織り込み済みだったというわけか。さすがである。
「え?」
虚を突かれたように、益田広報が狼狽する。